石破茂です。

株価が乱高下していますが、株価が上がって投資家の方々が利益を得た時には「素晴らしい」「嬉しい」といった反応は報じられなかったのに、下がった時は「投資家から悲鳴が上がっている」「金利を上げて株価を下げるのはデフレ脱却に冷や水をかける逆噴射政策」などとネガティブな報道がされていることには少なからず違和感を覚えます。

金融緩和政策の基調は変わらなくとも、多少なりとも金利が上がって円高傾向になれば、食料品やエネルギーなどそのほとんどを輸入で賄っている物資の価格は下落し、物価高に苦しむ多くの人々に対してはプラスの作用となるはずですし、預金に金利がつくことになれば、投資に躊躇する人にも金利収入というプラス面もあるはずです。

金利とは「おカネの値段」なのですから、それがほとんどゼロということは、お金の世界で市場原理が機能しないことになり、必要なところに資金がいきわたらず、必要でないところに資金が滞留することになります。

金利や為替相場は反応が早い株式とは異なり、多少の時間差があるのは当然ですが、物事にはすべてプラスとマイナスの面があるのであって、両面のバランスを見極めながら、慎重に政策を遂行していかなければなりません。

我が国が長く低成長に喘いできたのには様々な原因がありますが、その大きな要因の一つとして、企業が儲かってもそれを溜め込み、賃金の引上げや人的な投資を怠ってきたことにあるのではないでしょうか。

同時に、社会保障制度の改革も不可欠です。労働者の4割を占める非正規労働者には、多少賃金が上がっても不況時に解雇されることを懸念して消費を控える傾向があり、これが個人消費の伸びを抑える原因の一つとなっています。

自ら望まない形の非正規雇用を可能な限り減らすことと、非正規雇用であっても雇用主が社会保険料を負担する保険制度の導入に向けて、真剣に制度設計を進めるべきです。

医療制度の根幹である国民皆保険もその持続可能性が危ぶまれる事態となっており、世界に冠たるこの制度を何としても存続させるために、生活習慣病、ガン、認知症などそれぞれの疾病の形態に応じた医療の見直しを進めなくてはなりません。

緊急事態条項と自衛隊明記について