一方、JPモルガン証券の佐野氏は「影響は軽微にとどまる」とみる。川崎重工によると裏金づくりはあったが防衛省への過大請求は確認されていない。防衛省からの指名停止がない限りリスクは少ないとみられる。
「本件を機に膿を出し切る覚悟でコンプライアンス、ガバナンス体制の再構築に取り組む」。橋本社長は社内の全ての事業を総点検するよう指示した。防衛産業は参入企業が限られ、不正があっても他の企業に発注するのは難しい場合も多い。防衛事業を成長の柱に据えるからには、通常の企業以上に高いコンプライアンス意識とガバナンスの透明性が求められる。
三菱重工がデパートなら川重はショッピングモールです。個々の事業は独立独歩で会社としてガバナスが効きづらい。コンプライアンスも同様です。だから防衛に限らず、同じような不祥事が繰り返し起こります。
そして防衛部門では「税金にたかること」が仕事だと思っているので、まともなビジネス感覚が身につかない。技術力を磨き、原価を下げ、品質をあげて市場で戦う必要がないからです。
以前防衛省に陸のUH-X関連で取材をしたときに、想像図は川重からもらってくれと言われて、川重の広報に依頼したら断られました。防衛省のどの部署のどの人間に言われたといっても無視されました。
ぼくがいつも日本のヘリ産業に対して厳しい批判をしているからでしょう。ですが、税金で食っている事業で批判は許さないというのは、上場企業ではあり得ない話です。しかも普段は何を聞いても防衛省に聞いてくれと逃げるくせに、この件に関しては実質的に防衛省から依頼だったのに拒否しました。
その数カ月後、UH-Xに関しては官製談合がバレてスキャンダルとなり、多くのメディアが同社のサイトからの転用でUH-Xの想像図を紹介していたときは、乾いた笑いしかでませんでした。こういう企業を国防にかかわらせては絶対駄目です。
不正があっても他の企業に発注するのは難しい場合も多い。