この結果は、有酸素運動で直接使われた筋肉は維持できることを意味しており、有酸素運動をすると筋肉が分解されてしまうため、筋肉が減るという俗説を一部否定しています。

研究グループは、有酸素運動で直接使われた部位の筋肉量が維持される理由について、有酸素運動が筋肉の毛細血管化を促進したことで、インスリンやアミノ酸が筋肉に行き届きやすくなり、筋タンパク質分解が抑制されたためだろうと述べています。

また、この研究では、全身の体脂肪量の測定結果も報告されており、その数値を見ると、平均4kgも減少していました。

この数値は、全身の筋肉量の減少(0.5kg)に比べると大きなもので、引き締まった健康的な体型に近づいたと見ることができます。

筋肉量が増えなくても、体脂肪が減れば引き締まった体(筋肉質)に近づく
筋肉量が増えなくても、体脂肪が減れば引き締まった体(筋肉質)に近づく / Credit: 写真AC

ただ、今回の研究は肥満者を対象にしています。

有酸素運動で懸念されているのは、体がエネルギー不足になったとき脂肪の代わりに筋肉が分解されエネルギー源に当てられてしまうという点です。

そのため、肥満者は分解する脂肪が多いので問題ないかもしれませんが、脂肪をしっかり落とした人の場合は、有酸素運動で筋肉が分解される恐れが高まったりはしないのでしょうか?

筋トレ愛好家の場合、有酸素運動をして筋肉が落ちる心配はないのでしょうか?

筋トレと有酸素運動を同時にしても筋肉は増える

有酸素運動をすると筋トレを頑張っても筋肉が増えなかったり、落ちたりすることを懸念している人に対して一定の答えを与える研究としては、2022年にドイツ・ケルン体育大学のシューマン教授らの研究グループが発表したメタ分析があります。

結果を見ると、389人(筋トレのみを行った188人と、筋トレと有酸素運動を行った201人)のデータを分析したところ、有酸素運動をしても筋トレによる筋肥大効果(筋肉が大きくなる効果)が失われないことが明らかになっています。