ではなぜこのような俗説があるのでしょうか?
有酸素運動を行うと脂肪が燃焼されると言われますが、これは有酸素運動によってエネルギーの需要が増えるためです。
安静時とは異なり、運動時には体が多くのエネルギーを必要とします。そのため、体は脂肪をたくさん分解してエネルギーを供給するように指示を出します。これが、有酸素運動による脂肪燃焼の仕組みです。
しかしこのとき体は脂肪だけでなく、筋肉の分解(カタボリック現象)も同時に行ってエネルギー源に当てようとします。
そのため有酸素運動をすると筋肉が減るのではないか? という懸念が生じるのです。
ただ、こうした懸念はあれど、実際に有酸素運動で筋肉量がどの程度失われるのかという具体的なデータは不足しています。
今回発表された研究は、この疑問に答えるべく肥満者を対象として行われた4つの実験データを合わせて分析することで、有酸素運動で筋肉が落ちるという俗説の真実に迫ったものです。
研究では、肥満の人たちがウォーキングもしくはジョギングの有酸素運動に3~6カ月取り組んだ際の筋肉量の変化をMRI(核磁気共鳴画像法)で分析しています。
なお、参加者は、栄養士から有酸素運動をしない場合に体重の増減が起きない食事量になるように指導を受けました。したがって、実験中に体重が減った場合、有酸素運動によって消費カロリーが増えたことが主な理由になります。
果たしてどんな結果になったのでしょうか?
有酸素運動で使われた筋肉は維持される
合計175人の男女が週4~5回(1回30分程度)の頻度で3~6カ月間にわたり、ウォーキングやランニングに励んだ結果、全身の筋肉量が平均0.5kg減っていました。
ただし、減った部位に特徴があり、ウォーキングやジョギングであまり使われない上半身の筋肉量が減った(12.7kg→12.2kg)のに対し、使われた脚の筋肉量は全く減りませんでした(13.5kg→13.5kg)。