確かに最大輸出国は約28%を占める米国だが、その数量は21年にようやく1万トンを超えた程度。従って、櫻井妙案が「結果として中国は雇用を喪失し貿易量も減る(中略)自業自得である」とするには少なからぬ無理がある。

が、ホタテに限れば日本が毎年中国から輸入している約4千トンは、中国から買わなくても国内で調達ができる。そして米国向けの1万トンも、中国が止めた日本からの8万トンの中から、日本で加工して米国に輸出したら良い。武器の見返りに買ってくれ、と岸田総理は働き掛けるべきだ。

但しそれには、SC認証(生産認証)、ISO9000、HACCPなどの取得や、米国向けのFDA認証、欧州向けのBRCS認証が必要だし、中国の水産加工社並みに、養殖場から工場までの全プロセスでMSC、ASC認証を取得することも必要だ。政府はこの辺りにこそお金を使うべきだろう。

その暁には、米国だけでなく韓国、台湾、カナダ、豪州などへの輸出の道が拓ける。その総量1万トンを米国分と合わせれば2万トンを優に超える。政府は、前述した各種認証所得に加え、補助金や税の優遇などによりホタテ加工品の価格競争力を強化して、これらの西側各国に購入支援を仰ぐのだ。

中国の全面禁輸をWTOに訴えるのも良かろう。しかし、WTOが常に公平公正で無謬かといえば、必ずしもそうではない裁定を過去に日本は受けた。また、前述のような策を日本が講じる場合、逆にそれを自らの実態を顧みずに、中国がWTOに訴える可能性がかなりの確率であるだろう。

が、そういう事態が「想定外」にならないような、良く練られた政策を講じることにこそ、政府各省、とりわけ金を扱う財務省には、真価を発揮してもらいたい。如何にして国民から税金を搾り取るかばかりに腐心するのではなく、国民に勇気と力を与える政策にこそ、岸田総理は彼らの頭脳を使わせるべきだ。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?