次に上記報告の第4項を補足したい。ここでは「大気中のCO2の変化は地球の気温の変化に追随し、地球の気温の変化は海面温度の変化に追随」と書かれているが、実際には、海面温度の変化が大気中CO2濃度に強く響く。
なぜならCO2の海水への溶解度は温度が上がるほど小さくなるので(気体の液体への溶解度は、一般に温度上昇とともに低下する)、海水温が上がると大気中への放出が増えて大気中濃度が上がり、海水温が下がると海面吸収が増えて濃度が下がるからである。むろん、海水温が変化すれば気温も変化するので、結果的にCO2変化は気温変化に追随するように見える。
なお、私の知人の研究では、CO2変化への影響因子を統計的に分析すると、第1位に海水表面温度が出てくるとのことだ。この結果も、言わば当然の帰結と言える。この研究成果は、近々論文として世に出ると聞いている。
最近の異常な暑さの原因は?最後に、去年から今年にかけての異常な暑さについて触れたい。衛星観測による世界平均気温偏差の推移を見ると、過去数年おきに発生した気温ピークのほぼ全てにエルニーニョが関与していた。例えば1998年、2010年、2016年、2020年など。しかし、昨年2023年は異例の記録的な暖かさの年だったが、強いエルニーニョ年とは言えなかった。これはどうしたわけだろうか?
その答えの一つとして、米国の物理学者ハビエル・ピノスが「2022−2024年の異常な気候現象」と題する興味深い論文を書いている。その中で指摘されているのは、2022年1月に起きたフンガ・トンガ火山の大噴火による影響である。
通常の火山噴火ではエアロゾルや火山灰をまき散らすため日射量の減少と地表面冷却をもたらす。つまり寒冷化を引き起こす。しかし、フンガ・トンガは異常で、海底からの噴火で大量の水蒸気を成層圏にもたらした。成層圏の水蒸気濃度変化の観測データが同論文に載っているが、成層圏に大量の水蒸気が流入した様子がはっきり分かる。成層圏の水蒸気は10%も増加したとのこと。