TVのお天気キャスターたちも、最近は海水温の高さに言及することが増えたが、しかし彼らは海の熱容量が巨大であることに決して触れない。まるでタブーであるかのように。
海洋の熱容量が大気よりずっと巨大であることを認めてしまうと、気温変動など海水温には全然響かないこと、ましてや大気中の微量成分であるCO2の動向など海水温にはほぼ影響しないことなどは、ほとんど自明のことになってしまう。だから彼らは触れたがらないのではないか?
海水温変動がもたらす地域差と影響さて、報告書15頁の海洋表面温度分布を見ると、太平洋北部の日本周辺はほぼ全域、温度が高い。特に北海道など北日本でその傾向が著しい(最大で5℃近く高い)。水産物の取れ高や内容が大きく変化するのも、これだけ水温が変化しているので無理はない。魚たちは水温環境に敏感に反応するから。北海道でサケが獲れず、代わりにブリが大漁、などが典型例と言える。
逆に、今は冬の南米では近海の表層温度が低くて酷寒に苦しんでいる。世界中どこでも暑いと思ったら大間違いだ。また暑さが続くと「温暖化」を念仏のごとく唱える単細胞思考も、どうにかならないものかと思う。日本付近では今年の夏が暑く大雨が降るのも、基本的には近海の海水温が高いせいなので、おそらく今年も去年並みの暑さと大雨が続きそうだ。つまり、気温変動の第一原因は、海水温の変化である。
しかし日本のマスコミは、海水温の上昇も「地球温暖化」の結果だと言わんばかりに報道する。ここには、海洋と大気の熱容量が1000倍以上違うという科学的事実が存在しないみたいだ。
今は気象庁でも気象予報の際にエルニーニョ・ラニーニャ現象に言及する時代である。これらは海洋の温度に関わる現象なのだ。ここではまず、海水温→気温の因果関係を押さえておこう。
海水温変動の謎とその影響それでは、海水温がなぜ変動するのかと言えば、それはまだ十分に解明されていない。第一原因が太陽放射であることは確実だが、太陽放射にも長波と短波がある。さらに、それを遮るエアロゾルや雲の生成具合が影響し、雲の生成には銀河宇宙線も効く(昨年、その研究例を紹介した:「科学は真実を明らかにする:銀河宇宙線と雲生成の関係を明らかにした論文」)。季節や月にもよるが、銀河宇宙線放射密度と海洋表面温度の分布がきれいに同期しているデータもあった。