しかし、過去100年近い歴史を見れば分かるように、抑止力は破綻もあるが、妄想ではなく厳然として存在する。世界の安全保障の専門家と話せば分かるように、過去80年近い日本の平和は米国の「核の傘」によって守られていると言えます。上述のオバマ政権への”正当な働きかけ”が、その証拠の一つです。これは世界の常識です。

私は憲法9条などを作って日本に押し付けたGHQケーデイス大佐と、複数回対談しました。9条や「絶対平和主義」は、日本の過去の侵略戦争を防ぐためのものです。(20年後、彼は”独立国”日本がまだ変えていないことに驚いた。既に5年後くらいには9条押し付けを米国が後悔したという論もある)しかし、中国などによる日本への軍事行動は、9条では防げません。かえって攻撃しやすくなるだけです。

さらに戦わない「戦争放棄」政策は、非民主主義・権威主義・専制主義国家による日本への侵略抑止には絶対になりません。平和国家と言えば聞こえは良い。だがかえって中露朝などが喜ぶだけです。核を含む抑止力こそが、それを防ぐのです。これこそ抑止力の典型です。

上述した日本の核抑止を強める動きや、米国の核に対する依存度の高さは世界の常識です。ただ、日本人の多くはそれを知らないだけです。

さらに、これまでの米国と違い、世界の民主化や同盟国重視の方針にあまり興味がない指導者であるトランプが再選される可能性が高まっています。その場合、過去80年近く米国の核の傘に依存してきた日本がどうなるか。誰も止められない世界の多極化、深刻な国内問題を抱える米国の全体的な国力減衰、露中などの反米勢力の拡張。日本政府だけでなく、今まで無関心でほぼ何も考えてこなかった国民もしっかり事実を知り、考えて議論する時期が来ています。

ここで重要な論点を付け加えます。今回のニュースの一つで、外務・防衛閣僚会議2+2により、在日米軍に日米統合軍司令部を設けて、指揮系統を連携することになりました。これは、日本が自国防衛に対して腰が引けている米国を見て、”当然ながら”日本が”お願い”したものです。これまで事務レベルだったのが「閣僚レベル」に引き上げられたのも、日本側の”お願い”です。