ベイツ型擬態とは、毒のない生物が毒のある生物の見た目を真似して毒があるふりをする場合を指します。

一方、ミューラー型擬態は毒を持つ生物同士が似たような見た目になることで、捕食者に対する警告信号の効果を強化し、全ての有毒種の生存率を向上させようとするものです。

ケショウシリスは、まだ新種のため詳しく調査されていないだけで、体のどこかには毒を持つ可能性が残されています。

そうなると、ケショウシリスはベイツ型擬態ではなく、「毒がある生物同士が似た模様になる」ミューラー型擬態の一種だということになります。

(この擬態の種類に関する詳しい説明は、以下の記事で確認できます)

昆虫の擬態はすごい。 天敵だらけの世界で生き抜く「モノマネ戦略」とは?

いまのところ、どちらの擬態の種類かは分かっていませんが、いずれにせよ、環形動物では非常に珍しい現象だと言えます。

そして私たち人間の感覚からすれば、ウミウシに似ている美しいケショウシリスは、一般的なゴカイよりも好まれるでしょう。

「人間から嫌われ、魚たちには好まれる」ゴカイが、ウミウシに擬態して「人間に好まれ、魚たちには嫌われる」というのは面白い話ですね。

今後、研究チームは、「ケショウシリスの遺伝子がどうなっているのか」「外敵はどのように捕食対象を認識しているのか」など、多くの点を解明していくと述べています。

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参考文献

ウミウシ?いいえ、ゴカイです ~ウミウシに擬態する新属新種のゴカイを世界で初めて発見~
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/07/post-701.html

元論文

A new genus and species of nudibranch-mimicking Syllidae (Annelida, Polychaeta)
https://doi.org/10.1038/s41598-024-66465-4