しかし、自見氏らが新しく発見したゴカイは、これまでの常識を覆すような新種でした。
彼らが三重県や和歌山県、そしてベトナムで調査を進めていたところ、常識はずれの形や色をした新属新種のゴカイを発見したのです。
このゴカイは、自見氏らによって「ケショウシリス(学名:Cryptochaetosyllis imitatio)」と名付けられました。
これは色鮮やかに自身を飾っていることに対する「化粧」と、ウミウシのように化けているという意味の「化生」の2つを掛けた命名とのこと。
では、新種のゴカイ「ケショウシリス」とは、いったいどのような生物なのでしょうか。
ウミウシだと誤解させるゴカイを発見
研究チームが調査する中で、新種のゴカイ「ケショウシリス」は、「ウミトサカ」と呼ばれるサンゴの仲間に共生していることが分かりました。
通常、共生性の生物は、自分の存在を隠すために宿主と似たような形や色をしていることが多いものです。
しかしケショウシリスは、宿主のウミトサカとは全く異なる色彩や形をしており、目立っていました。
このことを不思議に感じた研究チームは、彼らの生息地周辺を調べることにしました。
その結果、周辺にはケショウシリスに非常によく似たウミウシの仲間が生息していることが明らかになりました。
このウミウシたちは、「ミノ」と呼ばれる部分の先端に毒を溜め込むことで知られています。
そしてケショウシリスの非常に大きな触手は、このウミウシのミノにそっくりです。