「やるなら、きちんとガイドラインを守ってくださいね」という真っ当な主張

 ゲーム業界関係者はいう。

「まず、ゲームのジャンルによって事情は大きく変わってきます。ノベル系やRPGモノがネタバレするとゲームタイトルのセールス減少に直結するので、著作権侵害に加えて損害賠償を要求すべき事案となってきます。一方、バトルモノのような場合は、それほどセールスに大きなマイナスの影響を与えないかもしれません。また、飯島さんの投稿を見ると、動画実況のすべてがダメと言っているわけではなく、『やるなら、きちんとガイドラインを守ってくださいね』という真っ当な主張をしているにすぎません。どのように実況者と向き合っていくべきかを自問自答している様子がうかがえ、ゲーム実況をめぐる問題の根深さを感じます」

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「著作権法がらみのネタは、弁護士の諸先輩ががんばっている分野なので、私は“さわり”程度に解説します。実は『ゲーム実況』も『ゲーム』という映像に関する著作物をプレイして金をとっていれば、著作権法違反になり、10年以下の懲役など、とても重い罪が科せられる場合があります。実際に令和5年5月17日、ゲームのプレイ画面などをYouTubeに投稿した人物が著作権法違反で逮捕されたというニュースがありました。

 音楽で考えてみるとわかりやすいのですが、例えば著作権が“切れていない”、すなわち作曲家が亡くなってから70年経っていない音楽を演奏して観客からお金をいただく場合、作曲家の演奏権を侵害しないように、例のめんどくさいJASRACに“上納”しなければなりません。もちろん、個人が家庭内で演奏して楽しむだけなら“上納”する必要はありません。これと同じように考えれば、最近のゲームはムービーやキャラクターの映像にとんでもないお金をかけているわけですから、ゲームの開発者に著作権が発生するのは当然として、勝手に配信する輩から金をとりたくもなります。

 ところで、著作権を侵害した場合、上記の通り10年以下の懲役など、重い罪が科せられるのですが、ほとんどの著作権法違反の罪が『親告罪』、すなわち著作権者の『告訴』がないと逮捕や起訴、有罪にはなりません。ここで重要なのが、ゲーム開発者側、任天堂やスクエア・エニックスなどは、ゲーム実況配信について細かくガイドラインを定めているということです。要するに、著作権者であるゲーム開発者に『告訴』する権利があるので、ガイドラインにしたがってさえいれば告訴されない、著作権違反を問われない、逮捕されない、ということです。おそらく、ガイドラインにしたがわずにゲーム実況している人がいるから問題になっているのでしょう。私も『信長の野望』が大好きなので、最新の『新生』シリーズのゲーム実況をよく見てますので、ガイドラインにしたがってくれていることを祈るばかりです」

 当サイトは23年12月6日付記事『「ゲーム実況配信者は多額の収益→ゲーム開発者は収益なし」の是正めぐり論争』でゲーム実況に関する仕組み整備の必要性などについて報じていたが、以下に再掲載する。

――以下、再掲載(一部抜粋)――

「ニコニコ動画」のように、ユーザがプレイ動画などを投稿するとそのゲームの開発元に収益が還元される仕組みを導入しているプラットフォームも一部にはあるが、ゲーム業界関係者はいう。

「プレイのアルゴリズムや画面のデザインをはじめタイトルに関する一切の著作権はその開発元に属するので、それをプレイする画面をそのまま無断でネット上にアップするという行為は、映画や楽曲の無断アップロードと同様に著作権侵害になるというのが基本的な考え。ただ、多くのユーザがプレイ動画をネット上にアップすることで生じる『ファン熱』や一定の宣伝効果も見込めるということで、ゲーム会社が容認・黙認しているのが現実。投稿者が『悪意』からではなく、純粋にそのタイトルが好きでプレイの様子を公開している以上、ゲーム会社としては、それに対していちいちクレームを入れることによってマイナスのイメージが広まってしまうことのリスクのほうを重視している面もある。

 ただ、RPGなど長いストーリー性を持つタイトルの場合、クリアまでの動画を見ただけで満足して買うのをやめる人が増えれば、ゲーム会社としてはビジネス的には損失となる。つまり総合的にみると、ゲーム会社的には実況動画によって得することも損することもあるため、業界共通の仕組みをつくるなどの一律の対応が難しいという事情もある」