■医学的な効用はあるのか

 ペット向け疑似睾丸インプラントという画期的な製品が世のペット愛好家に支持されていることは、Neuticlesの成功が如実に表している。

 しかしながら、1つの疑問が残る。去勢後にインプラントを入れた場合と入れない場合で、ペットの行動に明らかな差は現れるものなのだろうか?

 アメリカ国立衛生研究所(NIH)の調査に、この問いに対する1つの答えがある。

 米紙「ハフィントンポスト」(2013年4月25日付)の記事によると、NIHでは、オスのアカゲザルを対象に、去勢後に睾丸インプラントを入れた一群と、去勢をしていない一群の行動を比較した実験を行った。その結果、去勢していない一群には支配的な行動が増え、従属的な行動が減る傾向が見られた。この変化は最終的に群れの中でのヒエラルキーにおける序列に関係を及ぼしたという。

 つまり、去勢から生じるホルモン分泌等の変化によるアカゲザルの行動への影響は見られても、疑似睾丸インプラントを入れ、外見を復元したことによる影響は特には見られなかったということだ。

 しかし、ミラーさんはそうは考えていない。去勢した状態のままのペットのオーナーと、インプラント手術を施したペットのオーナーからの直接の聞き取りから、疑似睾丸インプラントには愛犬の行動を去勢前とさほど変わらぬ状態に保つ、心理的な効果があると確信しているからだ。

「犬も喪失感を覚える。睾丸を舐める習性があるため、疑似睾丸を入れてあげれば、去勢された犬は喪失感を味わわずにすむ」

 AFPの取材に対して、ミラーさんはそう答えている。