【2】データの取り違えが招いたミス
口に違和感があるから歯医者でちょっと見てもらおう、単純にそう思って受けたレントゲン検査で余命宣告を受けることになってしまった。 この不運な女性はキム・タット、34歳。医師は彼女の顎に癌腫瘍が育ちつつあり、余命3~6カ月であること、そして手術によってそれを切除しても余命は数カ月伸びるだけだろうと告げた。また、この手術を受ければ彼女の左側の頬周辺を無くなってしまうという。だが、まだ10歳と12歳の息子を抱えていた彼女は少しでも余命を伸ばすためならば、と合計5回もの手術を乗り越えた。
歯の治療から余命宣告、そして突如5回の手術が行われ、顔まで変形してしまう。彼女の心的、肉体的負担は想像にかたくない。だが、彼女は勇敢にも病気に向き合い、治療を続けた。 そして、診断を受けてから3カ月が過ぎたある日、重い足を引きずりながらも彼女は医者の元へ、現在の自身状態を聞きに行った。 だがそこで聞かされたのは、なんと“始めからがんはない”という衝撃的な事実だった。彼女に宣告をした医師が見ていたのは、他人のデータであったことが、全てが終わった後で発覚したのだ。彼女はなんの問題もなかったにも関わらず、あまりにも大きい負担を何カ月も強いられ、そしてこの先もずっと残る傷を負わされたのである。