責任限定契約で責任から解放

 社外取締役という制度には、どのような問題があるのか。

「日本取引所が本気でやりたいのであれば、上場企業が会費のようなものを払って、日本取引所から個別に上場企業と相談して最適な社外取締役に報酬を払えばいいのではないでしょうか? そもそも、社外取締役の設置を強制される意味がわかりません。各社の判断で必要ならば雇えばいいですし、必要ないと思わなければ雇わなくていい。それで会社が悪くなって株価が落ちたら自業自得です。なかば強制的になってきたのは、官僚の方々や進言している学者や著名コンサルタントの方々が、自分が就けるポストが欲しかっただけではないでしょうか。

 せめて、責任レベルを常勤取締役と同じにしてもいいのではないでしょうか。情報アクセス権限も常勤取締役と同じにして、やる気のある人は頑張って貢献できるようになれば、バランスは取れると思います。『社外取締役は社内事情や隠されていた情報は知らないのはしょうがないから、責任も軽いよね』という前提のもと、形式的には責任限定契約で責任から解放されています。責任も軽く、やれることもそんなになければ、会社の成長にどう貢献できるのでしょうか? 特定の分野の知見がある人材が必要というのであれば、適切な対価を払ってアドバイザーやコンサルタントを雇えばいいでしょう。そうした人たちは役に立たなければ解任できますが、社外取締役は年1回くらいのタイミングしかスムーズにクビにできません。良い報酬と社会的な名声が得られるという、現在のビジネス界で稀有な美味しい立場ではないでしょうか」(中沢氏)