抑えていたコメント力を発揮した『モーニングショー』玉川氏

水島 8月30日朝の『モーニングショー』はメインキャスターの羽鳥慎一アナが休みでした。司会の代役をテレ朝の野上慎平アナが担当しました。再発防止特別チームの会見などの映像を見せてからスタジオのパネルで問題を整理。野上アナは番組コメンテーターである玉川徹氏に話を振りました。玉川氏がこの問題についてテレビで話すはこれが初めてのことでした。先日、テレ朝を定年退職したばかりで報道の仕事は百戦錬磨といえる玉川氏はやはり「マスメディアの沈黙」という点に注目し、コメントもいつも以上に熱を帯びていました。

 玉川氏は原発問題や旧統一教会にたとえていました。報道する側の人間が実態を「わかっていた」のに「自分の仕事ではない」と考えて本気で報道してこなかった「不作為」があったと反省をこめて話していました。

「メディアの責任を報告書でも指摘されているのですけど、こういう記述がありますね。『テレビ局をはじめとするマスメディア側としてもジャニー氏の性加害を取り上げて報道するとジャニーズ事務所のアイドルタレントを自社のテレビ番組等に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるのではないかといった危惧からジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えていた状況があったのではないかと考えられる』と。こういうふうな部分も『(実際に)あったんだろうな』と思います。僕も少なくとも週刊文春の裁判の後は事実認定されていることなので、それは知っているわけですよ。だけど、僕も含めて『それをやるのは僕の仕事じゃない』と思っていたところがある。そういうふうに間接的に逃げていた部分というのがあるのかなと思います。僕は原発の事故の問題で、原発に危険性があるということを事故の前から多くのメディアの人間がわかっていたにもかかわらず、それを積極的に報道できなかった結果としてあんな(福島第一原発の)事故が起きてしまったという思いを強くもった。にもかかわらず『(ジャニーズ事務所の)この問題は自分の仕事ではない』と思っていた人も、報道関係者の中に多かったのじゃないかなと思います

水島 自分たち日本のテレビ局などマスメディアの前に先鞭をつけてきた週刊文春やBBCに敬意を払う発言でした。日本の報道関係者、テレビや新聞は他社の仕事について引用したり、評価したりということを潔しとしない面が強いのですが、ジャニーズの問題でテレビの人間がこれほど率直な言葉で他メディアの仕事を高く評価した、かなり珍しい出来事だったと思います。

「この後、ジャニーズ事務所が会見をするのだと思います。(中略)会見に出る僕らの側が(ジャニーズ事務所側に)石を投げる資格があるのかというのも同時に考えます。その会見に多くの記者が出ると思いますけど、テレビも含めていろいろなメディアが。でも、石を投げることができるのは、もしかしたら、週刊文春だったり、BBCだったり、フリーのジャーナリストとしてこの問題を追及しようとしてきた人だけかもしれないとも感じたりします」

水島 テレ朝を代表する情報番組『モーニングショー』が初めてこの問題を特集したことで、テレ朝をがんじがらめにしてきた呪縛がようやく解け始めたといえるかもしれません。とはいえ『ワイド!スクランブル』に垣間見えたようにまだギクシャクした面が根強く残っています。それでも今後に予想されるジャニーズ事務所の記者会見などではテレビ朝日は他局と同じように忖度なく報道していくのだろうと思います。