少し前にインターネット上に書き込まれた「コンビニオーナーとかいうほぼノーリスクで年収800万に達する神職」という投稿が一部で話題を呼んでいた。「なんでやらんの」「最初に小金を用意するだけ」とも綴られていたが、コンビニエンスストアのフランチャイズ(FC)店舗オーナーといえば以前から「過酷」「奴隷労働」「本部から搾取される」などとマイナスのイメージを帯びる言葉で表現されることも多かった。果たしてコンビニFCオーナーの労働環境・条件はどのようなものなのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 全国に約5.7万店舗あるコンビニ。すでに市場は飽和しているといわれ激しい競争が繰り広げられているが、コンビニFCオーナーをめぐるさまざまな動きが世間の関心事となることも珍しくない。2021年には東大阪市にあったセブン-イレブンの東大阪南上小阪店の元オーナーが24時間営業を拒否して時短営業を始め、本部からFC契約を解除され訴訟にまで発展した騒動は記憶に新しい。

 過酷な労働条件を伝える報道も多い一方、コンビニ業界関係者からは「大半のオーナーは一般の会社員と同じように休みを取っているし、通常時は過度な残業はしていない」「平均年収は700万円くらい。地方でも複数店舗を運営していれば1000万円以上というケースも普通にある」といった声も聞かれ、実態はまちまちなようだ。

必要なリソースやノウハウは全て揃っている

 コンビニFCへの加盟条件、運営条件はどうなっているのか。業界最大手のセブン-イレブンを例にみてみると、土地・建物をオーナー自身が用意する「Aタイプ」の場合、オーナーは開業準備手数料や開業時出資金などを含む「加盟金」315万円を本部に支払い、別途、工事費・賃料などはオーナー負担となる。開業後は月の売上総利益(売上高-売上商品原価)の43%(24時間営業の場合)をチャージとして本部に支払い、残りの57%がオーナーの取り分となる。オーナーはこのなかからアルバイト店員の給料など運営にかかる費用を支出することになるが、水道光熱費の80%、および不良品原価相当額の15%は本部が負担してくれる。また、オーナー総収入の最低保証として本部は年額2200万円(24時間営業の場合)を設定しており、オーナーは一定の収入を確保できることが保証されている。

 このほか、FC加盟の承認から契約に至るまでに発生する交通費や宿泊費、さらには開業に伴う引っ越しの費用なども本部が負担してくれる。

 金銭的なサポート以外では、セブン-イレブンではオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)と呼ばれる店舗経営相談員がつき、発注・販売・陳列・商圏調査・経営数値分析など店舗マネジメント面のあらゆる点でFCを支援する。

「毎週のように発売される新商品の開発や大々的なテレビCMの放映も、もちろん本部がやってくれ、店舗経営に必要なリソースやノウハウは全て揃っている。オーナーさんに必要なのは、開業資金と、本部の店舗指導員のアドバイスに従って『やるべきことを、しっかりとやりきる力』です。それさえあれば、基本的には失敗しない仕組みが出来上がっている。オーナーさんの急病や冠婚葬祭などが発生すれば本部社員がオーナー業務を代行してくれる制度もあり、世間の人が抱いている『本部vs.FCオーナー』というイメージは、実際には当てはまらない」(コンビニ業界関係者)

 ちなみにセブン-イレブンのオーナー募集サイトには現役オーナーの人々へのインタビュー記事が多数掲載されており、平日は8~17時頃の勤務で週休2日という働き方の事例や、前職より年収が上がったという事例、実家のある街にUターンして家族で店舗を切り盛りしている事例、年に3~4回は遠方の実家に帰省できるようになったという事例が紹介されている。

「FCオーナーといっても要は商売人であり経営者、会社の管理職と同じともいえる。たとえば同じ立地に店を出しても、うまくいく人もいるし、いかない人もいる。急にバイトが抜けてしまったり、トラブルや不測の事態が生じて1カ月くらい休みが取れないといったことは発生するかもしれないが、その程度のことは会社員でも公務員でも起こり得ることだし、非常時に都度、柔軟に対応していくことが求められるのは、どの職業でも同じ。ただ、FCオーナーの場合は大手コンビニ本部という強力なサポーターがバックアップしてくれる。その点は何も後ろ盾がないフリーランスの人や個人経営の店舗よりは踏ん張りがきくといえるのでは」(同)

 当サイトは23年11月26日付記事『「コンビニFCオーナーは奴隷契約」の嘘…大半のFC店は安定経営、経営者次第』でこの問題を追っていたが、改めて以下に再掲載する。

――以下、再掲載(一部抜粋)――

 コンビニエンスストアのフランチャイズ店(FC)オーナーいえば、一般的にはきついという印象を持たれていることが多いだろう。本部へのロイヤリティ負担に加え、廃棄費用も負担しなければならず搾取されているイメージがある。そして人手不足が加速するなかでも24時間営業を迫られ、FCオーナーは過重労働になりがちという話も聞かれる。とはいえ全国で5万6000店舗以上もあり、大手チェーンではFC店が9割以上を占めるなか、こうした話は実体を表しているのだろうか。今回、コンビニ業界に詳しい関係者への取材を通じて、FCオーナーの実態に迫った。