■シリア内戦

シリアでも、40年にわたるアサド家の独裁に対する国民の不満が爆発し、2011年に抗議運動が起こった。シーア派の政権によって虐げられてきたスンニ派の人々が中心になり、次第に武装化、過激化していき、反政府組織の「自由シリア軍」を結成した。これに対して、アサド政権側は、ロシアやイランの支援を受けて対抗し、内戦となった。

これにISも介入したため、内戦が泥沼化し、大量の難民が発生した。国外に避難した人は660万人、国内で避難生活を送る人は670万人と、第二次大戦後、最悪の難民となった。

2015年9月30日、ロシアは、アサド政権の要請に応える形で、ISを退治するという大義名分を掲げて、9月30日に空爆を開始した。

アメリカは、2019年になると、それまでのアサド政権打倒という政策を転換して、ロシアと共にIS掃討を最優先にするとした。そして、この年の10月には、トランプ政権は、シリア北東部から米軍を撤退させると表明してシリアから実質的に手を引き、ロシアはアサド政権を継続させることに成功した。

今回のコンサートホールでテロを行ったISがロシアに恨みを抱くのは、以上のような事情があったからである。