650人の殺害という証言とリストは、エルジェーベトの財産をめぐる陰謀によりでっち上げられたものという説もある。当時のハンガリー国王はエルジェーベトの夫から借金しており、その債権は妻である彼女に相続されていた。もしエルジェーベトが魔女として有罪になれば、その財産はハンガリー王家に取り上げられ、借金も帳消しとされてしまう。それを恐れた副王ドゥルゾー(彼はバートリ家の姻戚に当たる)が裁判を取り仕切り、親族間の同意を優先させたのだ。当然、エルジェーベトには反論も許されなかった。
20世紀のハンガリーでは一時期、エルジェーベトが陰謀に巻き込まれて無実の罪で殺されたのだという説が広がったこともあった。しかし、1970年代に膨大な裁判資料や当時の手紙などが発見、再調査され、彼女の真実は以前より広く知られることとなった。エルジェーベトこそ、世界でも有数の女性シリアルキラーであると。
1614年8月21日、エルジェーベトは漆喰と煉瓦で閉ざされた部屋の中でひとり死んだ。彼女にまつわる記録や資料は速やかに封印され、その名は長く禁句とされた。だが永遠の美貌のために処女の血を求めた女吸血鬼の伝説は残り続け、レ・ファニュの『カーミラ』やブラム・ストーカーの『ドラキュラ』といった怪奇小説にも影響を与えたとされる。
参考:「Wikipedia」「シリアルキラーズ 女性篇(青土社)」ほか
※当記事は2018年の記事を再掲しています。
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提供元・TOCANA
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