1983年5月、米国テキサス州でジェニーン・ジョーンズという看護師が逮捕された。彼女の容疑は殺人と傷害で、被害者は彼女が勤務する病院にかかっていたわずか1歳3ヵ月の女の子だった。ジョーンズは看護師という立場を利用し、幼い子供に必要のない薬物を注射して殺害したというのだ。しかも被害者は1人どころではなく、60人にも上る可能性があるという。「死の天使」と呼ばれた赤ん坊殺しのモンスターの登場に、全米のマスコミが飛びついたのは言うまでもない。

子ども47人が犠牲に…「死の天使」ジェニーン・ジョーンズ! 鬼畜すぎる看護師の“デス注射”、命を操る自分に酔いしれ…
(画像=逮捕当時のジェニーン・ジョーンズ。画像は「Murderpedia」より引用,『TOCANA』より 引用)

■相次ぐ不審死

 チェルシー・マクミランはテキサス州カーヴィルに住む若い夫婦の子で、早産で生まれて呼吸器に少し問題を抱えていた。大病院に通うのは大きな負担だった夫婦にとって、近所に新しくできた小児科クリニックは天の恵みともいえた。

 最初の診察の日、キャスリーン・ホランド医師とチェルシーの母ペティが話をする間、気の利く看護師ジェニーン・ジョーンズはチェルシーを別室に連れて行った。だが、それからすぐにジョーンズは叫び声を上げ、医師を呼んだ。ホランド医師とペティが行くと、チェルシーが発作を起こして意識を失い、青い顔で検査台に横たわっていた。

 ホランド医師とジョーンズの的確な処置により、チェルシーは無事に健康を取り戻したものの、あらゆる検査をしても原因はわからなかった。ペティは娘を救ってくれたクリニックに感謝し、周囲の人々に受診を勧めた。

 1982年9月17日、ペティはチェルシーに予防接種を受けさせるために再びクリニックを訪れた。だが、ジョーンズが一本目の注射を打った途端、チェルシーの様子がおかしくなった。チェルシーの呼吸は乱れ、母親にすがるような視線を送った。ペティは異変を訴え、ジョーンズに注射をやめるように迫った。だがジョーンズはもう一本の注射をチェルシーに打った。チェルシーの顔はみるみる青ざめ、呼吸が止まった。チェルシーはすぐさま救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。わずか1歳3ヵ月という、短すぎる一生だった。

子ども47人が犠牲に…「死の天使」ジェニーン・ジョーンズ! 鬼畜すぎる看護師の“デス注射”、命を操る自分に酔いしれ…
(画像=被害者のチェルシー・マクミラン。画像は「Daily Mail」より引用,『TOCANA』より 引用)

 一方、チェルシーが搬送された先の病院では異常な事態に医師たちが困惑していた。このクリニックから発作を起こした子供が救急搬送されるのはチェルシーが初めてではなかった。クリニックが開院してからたったひと月で5人。明らかに異常な数だった。40年という経験豊富な医師ですら、今までそんなことは一度もなかったと話した。医師たちは次に同じことがあったら注意しようと決めた。

 その機会はすぐに訪れた。5ヵ月の女の子が下痢や脱水症状で問題のクリニックを受診後、注射のあとに呼吸停止して救急搬送されてきたのだ。原因を見抜いたのは麻酔科医だった。赤ん坊はスクシニルコリンという筋弛緩剤の一種を投与され、呼吸困難に陥っていたのだ。この薬を大量に投与すれば心臓までもが麻痺して死に至る。一方で、体内では素早く分解されるために検出が難しい薬でもあった。

 クリニックにはスクシニルコリンのアンプルが二つあり、二本とも中身は減っていないように見えたが、検査の結果、何者かによって生理食塩水で薄められていることが判明した。

 最初に疑われたのはホランド医師であった。しかしすぐに疑いは晴れ、矛先はジョーンズへと向かった。何しろ、過去に勤めていた病院でも多数の子供が不審な死を遂げていたからだ。