かわいい映画に込められたシニカルなメッセージ

エイリアンの地球侵略で人類は滅亡か? “異種との共存”を描く映画『みーんな、宇宙人。』 宇賀那健一監督インタビュー
(画像=撮影:本間秀明,『TOCANA』より 引用)

――オレンジの胃の中で笹口騒音オーケストラの皆さんが歌ったり、ヒロトとクロウがラップバトルを繰り広げたりして、音楽的な部分でも拘りがあったように思います。そういった部分でも観てほしいところがあれば教えてください。

宇賀那:前回の『モジャ』は対話を一つのテーマにした短編でした。それを「どうやって更にエンターテイメントにしていくか?」と考えて、その手段として音楽が重要になっています。今回の映画は、パッと見かわいいけど、割とシニカルなメッセージがいろいろ込められています。そのシニカルな部分を笹口騒音オーケストラの方々に上手く伝えてもらったと思っていますね。

 僕は映画作りにおいて、いつも音をすごく重要視しているんですよ。今回はエイリアンなので、何をやってもよくてやりやすいのと同時に、ここまで振り切れるシチュエーションもありません。だから、胃の中の音とか、好き勝手にやらせてもらいました。

――ヒロトとクロウが、地球を滅ぼすかどうかという議論を、普通の対話でなくラップでやるところ斬新で、すごく印象に残りました。

宇賀那:解決に向けての議論を暴力じゃない形で見せていくのに適していると思って、ラップを入れましたね。

――監督はあまり演技指導をなさらないという話も聞きましたが、今回もそうだったのでしょうか?

宇賀那:キャスティングした時点である程度信頼しているので、現場ではあまり言わないことが多いですね。ただ、根本の部分が違うときや、そもそも方向性が違うときは、めちゃくちゃ話します。

――今回はモジャを動かす黒子もいましたが、モジャの動きが正しいかどうかを黒子本人は確認できないと思います。そういうところもあまり指導しなかったのでしょうか?

宇賀那:そこは、僕だけでなく、演出部や撮影部も含めて細かくやりましたね。黒子はもともとパペットを動かす人ではなく役者だし、僕もパペットをいつも撮っている人間ではないから、「どうすれば上手くごまかせるのか?」とかもかなり考えました。

 夏の撮影で全身ブルータイツは暑いし、腕も大変だし、その中で芝居もしなければいけません。かといって、パペットの人に任せるのは今回の作品においては違うような気がして、動きも含めて役者が責任を持ってやるべきだと思い、役者にお願いしました。

 僕もどうやれば正解なのかがわからないので、全スタッフ、全キャストで試行錯誤しながら作った感じです。