こんにちは。
すっかりご無沙汰してしまい、申し訳ありません。ただ、決してサボっていたわけではなく、いつもの投稿以上に重要な問題について書くための準備に手間取っていたことをご諒解いただければと思います。
今回と次回の2回に分けて(ひょっとすると3回になるかもしれません)書かせていただくアメリカのハイテク大手各社がおこなっている架空取引問題は、近い将来にアメリカばかりか世界中の金融市場を揺るがす大事件となることは間違いありません。
何度かこのブログをお読みいただいた方々は、私が投稿のたびにあらゆる論点をしっかりしたデータで裏付けるというスタンスを取っていることをご存じだと思います。
今回は非常に重要な問題であるだけに、いつもよりさらに入念に資料を渉猟していたため、前回の投稿からかなり期間が空いてしまいました。ですが、お待たせした甲斐のある内容になったと自負しております。
今やマグニフィセント7はマグニフィセント1に滅びつつある古いものはまだ死にきれず、新しいものは生まれ出ることができない過渡期には、ありとあらゆるところに魑魅魍魎が出没する。
――アントニオ・グラムシ『獄中ノート』より
アメリカ株市場を見ますと、もう3~4年にわたって持続的に上昇するのは時価総額の大きなハイテク大手株ばかりで、中小型株は見向きもされないという相場が続いてきました。
ところが、去年あたりから物色対象がさらに絞りこまれて、マグニフィセント7と呼ばれるアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグル)、メタ(フェイスブック)、テスラ、そしてエヌヴィディアの7社だけが牽引し、その他の銘柄は蚊帳の外という相場になっていました。
今年に入ってからは、この少数銘柄への絞りこみ傾向がさらに激しくなって、マグニフィセント7の中ではいちばん時価総額の膨張が遅れていたエヌヴィディア株だけが大幅な上昇を続けています。
上段左側をご覧いただくと、今年年初来5ヵ月半で総合収益(配当があったらその配当も株の買い増しに使ったとき得られる、株価上昇率と配当による持株増加との総合的な収益)が3ケタとなっているのは121%となったエヌヴィディアだけで、2位のメタでさえ32%にとどまっていたことがわかります。
右側にはアメリカ株を代表する指数であるS&P500株価指数の上昇分のうち、マグニフィセント7がどの程度貢献していたかが表示してあります。
じつにS&P500上昇分の32%をエヌヴィディア1社が担っていました。そして2位はA株、C株合わせて7.63%の貢献があったアルファベットなのですが、貢献度ではエヌヴィディアの4分の1未満だったのです。
下段に眼を転ずると、去年9月からの株価推移では、エヌヴィディアとともにメタも約80%の上昇となっています。ただ、メタの場合史上最高値からかなり下げていた株価の戻りという側面があるとともに、今年の3月以降はほぼ横ばいにとどまっています。
つまり、今やアメリカ株市場で持続的な強さを発揮しているのはエヌヴィディア1銘柄のみなのです。これからもエヌヴィディアだけが順調にひとり旅を続けて、他のあらゆる銘柄との株価上昇率の差を広げつづけるのでしょうか。
そうはならない可能性が高いと思います。その理由ですが、まず過去1年半ほどのエヌヴィディアの株価の上がり方はあまりにも急激だったので、このペースが長期にわたって持続するはずがないとほとんどの市場参加者が考えていることが挙げられます。
次の2段組グラフの上段をご覧ください。