単身者率が高まる時代
たとえば、社人研が2024年4月に公表した日本の「世帯数推計」のうち、今後の日本にとってとりわけ重要なデータは表1のようにまとめられる。
ここで国勢調査データを使って、1980年の単身者率をみると19.8%に過ぎなかった。それが1990年に23.1%、2000年には27.6%に上昇して、2010年には32.4%となって、2020年には表1で示すように38.0%になった。
小家族化が進む時代並行して、「1世帯の平均人数」(以下、平均世帯人員)も1955年の4.90人をピークに、1970年が3.73人、2000年が2.67人、2010年が2.42人になり、2020年の2.21人にまで減少した。それが2050年には1.92人まで落ち込むという予想がなされたわけである。
神野が繰り返す「共同体」イメージが濃厚な家族論は、単身者率と平均世帯人員のデータが皆無なために、直近の50年間でもその時代を特定化できない。これではせっかくの「共同体」論も宙に浮くであろう。
ただし、2020年でも東京都のそれは1.92人であり、北海道でも2.04人であり、大阪府でも2.10人だったので、30年後の1.92人はそれほど驚くことでもない(総務省統計局、2024)。進行する「単身化」と「小家族化」に、立場を超えて取り組むしかない。
単身化と小家族化表1からは、人口減少下ではあるが世帯総数はもうしばらく増加するとみられる。しかし、いずれは減少に転じて2050年には5261万世帯まで落ちてくる。
「単身世帯」が2020年の2115万世帯(38.0%)から2050年には2330万世帯(44.3%)へと急増することは大きな変動だから、これらを踏まえなければ、「家族の共同体的な絆」の推移も分析できない。
繰り返すが、このような家族変動のなかで、繰り返されてきた神野の「家族共同体論」はいつの時代を念頭においたものなのか。むしろ私には、無定義の家族共同体や地域共同体が、神野の願望が認識と交換されたままの表現のように感じられる。
移動型社会に配慮する同様に、「人間の生命活動の基礎単位である家族同士が、地域の固有な自然環境のもとで協力して生命活動を営むために、固有の生活様式を形成して地域共同体」を築いていく」(:214-215)もまた、いつの時代の地域社会を論じたのだろうか。
移動型社会が到来して久しいが、そのうえ単身世帯が増加する21世紀の今日、このような文章に当てはまる日本都市における「地域共同体」を探すのは困難であると考えられる。
(下につづく) ※ 参照文献は「下」でまとめて掲示する