「走る宝石」と言われたクリスプカットはハンドメイド
初代シルビアといえば、継ぎ目が非常に少ない「クリスプカット」というデザインで知られますが、装飾用にカットされた宝石のように美しい姿から、「走る宝石」と言われました。
これは驚くべきことに純粋な日産社内デザインであり、アメリカで展示された際には、カーデザインの指導を仰ぐため日産が海外から招聘したデザイナーの作によるものと誤解されたほどですが、それだけ日本のデザインは立ち遅れているとされていた時代です。
もちろんこのようなデザインを、1960年代半ばの日本メーカーが通常のラインを通して生産するのは不可能であり、殿村製作所(現・トノックス)へ委託して職人による手作業、すなわち後のいすゞ 117クーペ初期型のように、ハンドメイドで生産されました。
おかげで1965年発売当時の価格は約120万円と、当時の日産で最高級車セドリック(※)の最上級グレードより高価になり、車格は「ダットサン」ブランド相当でモーターショーにもダットサン・スポーツ1500としての出展でしたが、日産ブランドで発売されています。
(※初代プレジデントの発売は、初代シルビアより少し遅れた1965年10月)