■嘘を塗り重ねた末に
この頃、アンドリューは元アメリカ海軍のジェフリー・トレイルと知り合い、親友になる。アンドリューは、この真面目で男気のあるジェフリーに憧れるようになった。自分が決してなれない正直に生きる男だと思ったのだろう。そして、友人を訪ねサン・ディエゴにやって来た、ミネソダ州ミネアポリスに住む建築設計士のデイヴィッド・マドソンと出会い、一目惚れしたのもこの頃だった。
当時、アンドリューは60代後半の富豪ノーマン・ブラッチフォードの愛人で、ノーマンの大豪邸に住み毎月2500ドル(約27万円)のお小遣いをキャッシュでもらい、クレジットカードを自由に使わせてもらうという煌びやかな生活を送っていた。愛人である以外は無職で、「ノーマンの金でデイヴィッドと交際し、プレゼントをあげ、楽しく遊びまくる」という、アンドリューの描いていた通りの生活を送っていた。
しかし、1996年秋。その生活は音を立てて崩れ去ってしまう。ピチピチした若さが薄れつつあるアンドリューのことを、ノーマンが魅力的だと思わなくなってしまったのだ。愛人関係とはいえ、ノーマンはアンドリューを金で買っている「ご主人様」。あれほど自分を可愛がり甘やかしてくれたアンドリューのことを、ノーマンはあっさりと捨てた。同時期、恋人のデイヴィッドも「交際しているのに住所も電話番号も職場も教えくれない」アンドリューに対して違和感を持つようになり、別れたいと言うようになった。
また時を同じくして、アンドリューの親友ジェフリーがデイヴィッドの住むミネソタ州ミネアポリスで、プロパン販売業の仕事に就職。アンドリューはミネソタ州に早く馴染めるようにとジェフリーとデイヴィッドを引き合わせた。アンドリューは「そのうち自分もミネソタ州に行って、3人で和気あいあいと仲良く楽しく生活する」という青写真を描いていたのだ。
ノーマンから追い出されたアンドリューは金になるドラッグ売買に手を染めるが、自分もドラッグを打つようになり金はまったく貯まらず。SMの世界にもずぶずぶにハマり、天性のサド力でMたちを魅了することで快感を得るようになっていった。ノーマンから捨てられ、だらしなくなり、体重が増えキラキラと輝き陽気だった性格も、陰気になっていった。