■連続殺人の始まり
1997年4月、ジェフリーはアンドリューの塗り重ねた嘘に全て気づいてしまい、恐怖心を抱き、距離を置く決心をする。デイヴィッドもアンドリューの嘘がとんでもないものだと知り、別れるだけでなく一切の関係を持ちたくないと思うようになっていた。しかし、ノーマンを失ったアンドリューに幸せを与えてくれるのは彼らしかいなかった。アンドリューは4月25日、サン・ディエゴの友人たちに別れを告げ、ミネソタ州ミネアポリスに片道切符で飛んだ。
アンドリューはデイヴィッドのアパートに滞在したいと頼み、サン・ディエゴの知り合いからアンドリューが金銭的に困っているらしいことを聞いていた彼はしぶしぶ了承。彼の友人たちは「そんなヤバい男を泊まらせるべきではない」と反対したが、優しい性格のデイヴィッドは「彼は今、大変らしくて。1晩だけだし」と説明した。
アンドリューが到着した夜、デイヴィッドは自分の同僚も誘ってみんなで夕食に出かけた。この席でアンドリューはデイヴィッドのことをこきおろしたり「ビッチ」と言うなど無礼な態度を取りまくり、同僚たちは激しい嫌悪を抱いた。アンドリューがこきおろしたのは、デイヴィッドの態度がおかしいこと、また2人きりで再会のディナーを楽しみたかったのに同僚を誘ったこと、その同僚たちに自分のことを恋人だと紹介しなかったことに酷く腹を立てていたものと見られている。
2日後、アンドリューから呼ばれたため、ジェフリーがしぶしぶとデイヴィッドの家を訪問。その夜、アパートの住民は彼らが激しく口論している声を聞いている。しかし、翌日、デヴィッドとアンドリューが普通に犬の散歩をしていたことから「お酒でも飲んで喧嘩したのだろう」だと思われ、大ごとにはされなかった。
それから2日間、デイヴィッドが2日連続して欠勤したことを不審に思った同僚たちが、彼のアパートを訪問。その時2人はまだ部屋におりコソコソと話す声が聞こえたため、同僚は痴話喧嘩を拗らせているのかと思いこみその場を去った。
しかし、夕食でデイヴィッドのことをこきおろしている時の鬼のような表情を思い出し、心配になり警察に通報。アパートの管理人にドアを開けてもらい、デイビッドの部屋に入った警官により、じゅうたんに巻かれたジェフリーの遺体が発見された。ジェフリーは頭部を何回もハンマーで殴られ大量に出血。脳みそと血しぶきが壁に飛び散っている酷い有様だった。
警察はアンドリューとデイヴィッドが、ジェフリー殺しの容疑者であるとして行方を追った。そして2日後の5月1日。ラッシュ・シティ近くのラッシュ・レイクの草の中で背中を1発、頭部を2発撃たれ絶命しているデイヴィッドを発見した。警察は「ジェフリーとデイヴィッド殺しの容疑者」としてアンドリューを全米指名手配した。
アンドリュー・クナーナンが指名手配されているというチラシを見たサン・ディエゴの友人たちは驚いた。アンドリュー・デシルヴァとして知っている男がアンドリュー・クナーナンという名前で指名手配されていたからだ。友人たちはアンドリューが偽りの人生を歩んできたのだと知り愕然。ノーマンに捨てられ自暴自棄になり、最も親しいジェフリーとデイヴィッドを殺害したのだと思い、「自分たちも殺されるのでは」「偽りの彼を知る友人全員をターゲットにしているのでは」と怯えるようになった。