■アメリカズ・モスト・ウォンテッド

 アンドリューは、サン・ディエゴには戻らずデイヴィッドの車を運転してシカゴへと向かった。そしてシカゴに住む72歳の不動産開発業者のリー・ミグリンの自宅を訪問し、ガレージで彼を殺害した。5月4日に遺体で発見されたリーの顔はガムテープでぐるぐる巻きにされ、鼻から息ができるように小さな穴が開けられていた。胸には複数回ナイフで刺されたあとがあり、全ての肋骨が折られていた。首は深く切られており、ガレージは一面、血の海だった。

 現場からは2000ドル(約22万円)とゴールド・コインのコレクション、リーの愛車のレクサスが盗まれており、近くにデイヴィッドの車が乗り捨てられていたことから、アンドリューが犯人だと断定された。リーとアンドリューが顔見知りだったのか、どうして彼が殺害されたのかは不明。「幸せな結婚生活を送っていたリーは実は隠れゲイでアンドリューが何度か金銭を受け取り相手したのではないか」という憶測が流れた。

 リーを殺害し「3人を殺害した容疑」で指名手配されているアンドリューはニューヨークに向かった。マンハッタンの高級デパートでショッピングをし、映画館で映画を鑑賞、チェルシーにあるナイトクラブにも繰り出した。

 5月9日は、リーのレクサスを運転し、車内の携帯電話を使用しリラックスしながらドライブしていた。携帯電話を使ったことで「フィラデルフィア近辺を逃走している」と警察にバレてしまい、ラジオのニュースで警察にどこにいるのかがバレていることを知ったアンドリューは、車をチェンジしなくてはと焦り、近くのニュージャージ州の墓地に入った。そこで墓地管理人のウィリアム・リースを殺害。レクサスを乗り捨て、ウィリアムのピックアップ・トラックで逃走を続けた。

 2週間の間に3州で4人を殺害し逃走を続けるアンドリューを、FBIは10大最重要指名手配リストに入れ、『アメリカズ・モスト・ウォンテッド』という逃亡を続ける極悪犯の目撃情報を呼びかける番組でも放送された。