■ヴェルサーチ殺害、そして
アンドリューはサウスビーチで潜伏していたわけではなかった。普通に生活していた。長期間この地で生活していたのはサウスビーチのキングと呼ばれていたジャンニ・ヴェルサーチに、どうにかして近づこうと模索していたからだと言われている。
7月15日、アンドリューは毎朝のルーティーンである新聞、雑誌購入から邸宅に戻ってきたジャンニ・ヴェルサーチを、正面玄関で至近距離から顔面に向けて拳銃を2発撃ち込み殺害した。目撃者に追われたものの、拳銃を向けたため捕まることなく逃げられた。近くの駐車場に乗り捨てられていたウィリアムから盗んだピックアップトラックには、ジャンニの返り血を浴びた服、アンドリューのパスポート、ニューヨークの映画館のレシートなど、アンドリューと結び付けられる証拠品が大量に見つかった。
目撃者もいるため、ジェンニを殺した犯人もアンドリューだと警察とFBIは確定。被害者に共通点がなく、殺害を行った州もまちまちなため、無差別に殺す殺人鬼だと全米を恐怖の底に陥れた。
サウスビーチから逃げ出す機会を失い、ノーマンディ・プラザ・ホテルにも戻れず、金もない、食べるものもない、頼れる人もいないアンドリューは、マイアミ・ビーチに停泊していた無人のハウス・ボートに隠れた。
7月23日、ハウス・ボートを定期的に見回っていた管理人は、誰かが不法侵入していることに気づき警察に通報。発砲音も聞こえたとのことで、大勢の警官が駆けつけ緊張が高まった。夜になり、警官はハウス・ボートに催涙ガスを投げ込み入り突入。2階寝室で、銃口を咥えて引き金を引き自殺したアンドリューの遺体を発見した。銃は、殺害に使われたもので、最初の犠牲者ジェフリーから盗んだものだった。
ベッドに座り壁にもたれかかったアンドリューはボクサーショーツだけという姿でお腹はぺったんこ。「空腹で金を得る目処もなく逃げられないと絶望して自殺した」と報じられた。