■開発までの裏側

フットマーク株式会社の担当者によれば、4~5年前に学校内のジェンダー問題を耳にしたことが開発のきっかけだったという。

「学校水着を扱う小売店から、『トランスジェンダーの生徒がいるので、その生徒が着用できる水着はないか』というお問合せが年に3~4件ありました。当時は、シャインガード(長袖のラッシュガードタイプ)と水着を合わせた、肌の露出が少ない組み合わせをご紹介していました。ただ、学校の先生からジェンダー問題に配慮されていることを聞くたびに、社内でも、専用の水着を発売してはどうかという声があがるようになったんです」(担当者)。

今までにないコンセプトを持つ商品だったこともあり、開発に至るまで時間を要した。開発に着手したのは、社内で声があがってから2年後の2021年8月だったという。

前出の担当者は、「商品化が実現した背景には、一人の営業担当者が声をあげ続けたことがあります。その社員は、全国の販売店や問屋、学校から性別の不一致で水着選びに困っている生徒さんや先生方の声を聞き、この悩みを商品で解決したいと考えていました。ようやく、そうした悩みが解決できる製品を生徒さんへお届けできたことは、製造業を生業とする者にとって最大の喜びです」と、話す。

「水着選びで悩む生徒の役に立ちたい」──。そんな現場の社員の声が、たくさんの人の心を動かしたのだ。水着の開発にこれほど熱い裏側があったとは…。