日本に住むムスリムの暮らしの満足度は高め
ムスリムが日本に住む上で、宗教的・文化的なハードルはないのか。
「ハードルというほどのことはないと思います。2005年に、早稲田大学人間科学学術院アジア社会論研究室にて行った『在日ムスリム調査』で、滞日年数10年以上の首都圏の外国人ムスリムを対象にアンケートを取ったことがありました。その結果、日本における総合的な生活満足度について『満足』だと回答した人は約8割、また日本の生活への適応度について『適応している』と回答した人が9割近くいたのです。日本社会は安心・安全で、仕事があるというのが大きな要因です。また食生活に関しても、首都圏の各地には、豚肉とお酒を除いて、ムスリムに「許されている(ハラール)」食品を販売するハラールショップが増えていますし、店舗がない地方でもインターネットを通してハラール食品を手に入れられます。
学校給食など、自らで選べない食事に関しては少々難しい部分もありますが、お弁当などでの対応がなされているようです。ハラールについて、すべてのムスリムが厳格に守っているともいえません。例えばアルコールが含まれている調味料に関しては使ってもいいとするムスリムもいるようです。イスラム教は神と個人の間の契約で成り立っているので、実は人それぞれ教義の捉え方が異なることがあります。ある意味、非常にフレキシブルな宗教ともいえます」(同)
礼拝所であるモスクは日本全国に100カ所以上あり、礼拝はモスクでなく家でも、また最近商業施設や空港に増えてきている公共の礼拝スペースでもできる。当然ながら母国のイスラム社会で暮らす場合とは異なることも多いが、ムスリムの人々が特段日本で生活しづらいということはないという。