■ヒッチハイクに潜む罠
1977年5月19日早朝、20歳のコリーン・スタンは友人の誕生日祝いのため、オレゴン州ユージーンの自宅から、カリフォルニア州ウエストウッドへと出発した。最初は自分の車で行こうとしたが、その日は車の調子が悪かったので、ヒッチハイクで向かうことにした。
当時は多くの人がヒッチハイクをしており、乗せてくれる車も多かった。コリーンも大型トラックを乗り継ぎ、午後にはカリフォルニア州レッドブラフの国道36号線までたどり着いていた。5人の男たちが乗る車を断り、次に停まってくれたのは、赤ん坊連れの若いカップルの車。男性はオタクっぽい外見、女性はどこにでもいそうなごくごく平均的なルックス。コリーンは安心して車に乗り込んだ。
だが、後部座席に乗ったコリーンを、男は無言のままバックミラーでじっと見てきた。少し気味悪くなったが、女性も赤ん坊もいるのだし……と彼女は気にしないようして、愛想良く振る舞った。
しばらくすると、車はガソリンスタンドに立ち寄った。コリーンがトイレから戻ると、後部座席にはさっきまではなかった大きな木箱があった。それから20分ほど車を走らせた男は「ここら辺で有名な洞窟に寄りたいのだが、よいか?」とコリーンに尋ねた。すぐに戻るとも言ったため、ただで乗せてもらっているコリーンは快く了承。人気のない場所で停車して、カップルは赤ん坊を連れて出て行った。
次第にコリーンは、自分がどこにいるのか見当もつかず不安になった。そして次の瞬間、彼女は男にナイフを突きつけられ、両手に手錠をかけられた。目隠しをされた上、頭にはあの木箱を被せられた。箱は首にフィットするように穴が開けられており、叫び声が聞こえないようにするため、内側にはカーペットのようなものが貼られていた。
しばらくすると女性が赤ん坊を連れて車に戻ってきて、車は出発。カップルの家と思われる場所に到着し、コリーンは目隠しをされたまま、家の地下へと連れて行かれた。
地下室でコリーンは、箱の上に立たされ、手首にバンドをはめられて天井からチェーンで吊るされた。服は破り取られ、全裸にされた。足元の箱を取られて、万歳をした状態で天井からぶら下がった格好にされ、彼女はパニックに陥った。
男は無言で鞭を手にし、彼女の体を力一杯叩き始めた。コリーンの目隠しが少しずれて、男の側に女が寄っていくのが見えた。2人はセックスを始め、やがて性交渉を終えた男は、今度はコリーンの全身を撫で始めた。コリーンはそこで気を失い、次に意識を取り戻した時にはチェーンは外されていた。強姦された感覚はなくホッとしたのもつかの間、男は再び彼女の頭に箱を被せた。
コリーンはその夜から地下室で監禁され、拷問・暴行を受ける日々が始まった。 一方その頃、コリーンの両親は突如姿を消した娘の行方を探していた。自宅から彼女の行き先だったカリフォルニアの友人宅まで、道沿いの町にある全ての警察署をまわって行方不明届けを出した。しかし、コリーンにつながる手がかりはなく、何の手がかりもつかめなかった。
行方不明になってから1年が過ぎた頃から、両親は、娘が事件に巻き込まれたのではなく、騙されてカルトに入ったのかもしれないと考えるようになった。この時代、70年代は、ヒッピーな若者たちが様々なカルトにはまっていた時代だった。