ブリヤート共和国出身者はモスクワ出身者の33倍の戦死率
ロシアの独立系メディア「メディアゾーナ」は、出身地域別にロシア軍兵士の戦死統計を掲載し続けている。刑務所の実態、司法、警察などに関係する人権状況を調査報道することが多いメディアで、BBCなどとも協力して、戦死者の独自データを集めている。
この調査では、アメリカやウクライナの政府機関発表より犠牲者数が少ない。2022年2月24日のロシア軍による全面侵攻以降、2023年12月27日までの地域別の戦死者を見てみよう。
1月17日に大規模デモが発生したバシコルトコスタン出身の戦死者とモスクワ市出身者の戦死者を比べてみた。
〇バシコルトコスタン 戦死1304人(人口約405万人)
〇モスクワ市 戦死423人(人口約1261万人)
人口比では、少数民族を多数抱えるバシコルトスタン出身者は、モスクワ出身者より約9.6倍もの戦死者を出している計算になる。
同じように同じように見ていくと、シベリアにありモンゴルに隣接するブリヤート共和国(仏教が主流の共和国)は、モスクワ出身者より実に32.6倍の戦死率。ブリヤート共和国の人口は約98万人。ブリヤート人はロシア連邦全体で45万人程度しかいないので、戦死が続出するいまの状況が長引けば、民族存亡の危機につながる。
北コーカサスのダゲスタン共和国はどうか。ここは一昨年9月、既存の兵員では人員を確保できなくなったプーチン政権が、30万人の動員をかけたとき、ストレートに動員に反対する街頭デモが起き、多数が警察に拘束されたところだ。そのダゲスタン共和国も、モスクワ市出身者より7.6倍も高い戦死率なのである。
以上は、2022年2月24日から2023年12月27日までを均して計算したものだが、特定時期をとりあげれば、モスクワ市よりブリヤートの方が人口比で40倍以上も戦死者を出していたこともあった。
これは、民族別の戦死ではなく、あくまでも出身地域別の戦死者だ。モスクワにも少数民族は住んでいるし、それぞれの少数民族共和国にはロシア人も住んでいるからだが、辺境地域や少数民族地域の戦死が集中しているのは歴然たる事実だ。