間もなく2年を迎えるウクライナ戦争では連日犠牲者が出続けている。そんな中で、ウクライナとロシア内少数民族が連携する可能性が出てきた。

 昨年11月8日、欧州議会庁舎内で行われた国際会議で、100年以上前、ロシア南部に実在した「北コーカサス山岳共和国連邦」の復興宣言がなされたのだ。ちなみに、山岳共和国連邦領土の西端は、海峡を挟んでウクライナが奪還を図るクリミア半島につながる。

 クリミア半島でウクライナが圧倒的優勢に立った場合、独立に向けての動きが活発化するだろう。

 そうなると、21世紀のロシア革命的な歴史的大事件に発展する可能性もなきにしもあらずだ。ロシア少数民族の視点から、その背景と展望を探る。

ウクライナ戦争、ロシア崩壊のカウントダウンか…少数民族が独立運動を活発化
(画像=ロシアは83の州や共和国で構成される他民族国家。ロシアは帝政時代に諸民族地域を武力併合し現在にいたっている。 ,『Business Journal』より 引用)

零下30度のロシアでクライナ侵略以降、最大規模のデモ  1月17日、ロシアのウラル山脈南部に位置するバシコルトスタン共和国で、1万人規模の大規模デモが起き、機動隊と衝突が起きて逮捕者が出ている。

 CNNなどの報道によると、地元少数民族バシキール人のフェイル・アルシーノフ氏が民族的憎悪の扇動した罪で有罪判決を受けた。これに抗議する群衆が集まり、大規模デモとなったのだ。ロシアではウクライナ全面侵略開始以降、デモは禁止されている。今回のデモも無許可だから、警察は捜査を開始。今後、逮捕者が増える可能性がある。

 このバシコルトスタン共和国には、もちろんロシア人も住んでいるが、地元の少数民族バシキール人(主にイスラム教徒)やタタール人などが住んでいる。

 今回の大規模抗議デモのきっかけは、ウクライナ戦争や動員にストレートに反対する目的ではなかった。しかし、次第にウクライナ戦争やプーチン政権批判に傾いていった。その背景には、ウクライナ戦争に駆り出されて戦死を強いられている少数民族の存在があり、今後は何かのきっかけで爆発する可能性を示した。

ロシアはウクライナ戦争で自国内少数民族を大量抹殺  いま、ロシアでは“自国内民族浄化”が進んでいる。

 ロシア連邦は83の共和国と州などに分かれており、登録されている民族は180以上。これだけの民族が存在するのは、広大なロシアの領土が、帝政ロシア時代に戦争によってさまざまな民族を征服して獲得された結果である。

 アメリカの情報機関によれば、昨年12月時点でウクライナ戦争におけるロシア軍死傷者は31万5000人。戦死者数と負傷者数の内訳は明らかにされていない。ウクライナ当局による発表でも、これに近い数値だ。ロシア兵の戦死者は、ロシア人でなく帝国時代に征服された少数民族の占める割合が高い。

 モスクワやサンクトペテルブルグなどの大都市出身者に大量の戦死者が出れば、ロシア国民に大きな動揺が起こり、弾圧しても反戦運動が起きる可能性がある。そうなれば戦争遂行の妨げになるため、少数民族を盾にしてロシア人や大都市出身者を守る意味合いもあるのだろう。

ウクライナ戦争、ロシア崩壊のカウントダウンか…少数民族が独立運動を活発化
(画像=地域別の戦死者数。ロシアの独立メディア「メディアゾーナ」調べ。同メディアホームページより(赤字は筆者),『Business Journal』より 引用)

 しかし、その実態を見るにつれ、単にロシア人を守るだけでなく、ロシアはウクライナ戦争を利用して国内の少数民族抹殺を推進しているのではないかとすら思えてくる。