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ではまず一品目からスタート
セバスチャン、YOUはなぜ日本酒を?
ではまず一品目からスタート
まず初めに運ばれて来たのはこちら。兵庫県産の揚げジャコの香ばしい風味が、甘酸っぱい仙介と合います。あっさりした中に優しい甘味と深い旨味があるところが、どこか似ているこのペアリング。
トンナートソースは、ツナやアンチョビ、ケイパー、卵、野菜と一緒に煮込んだお肉のスープストックなどで作るイタリア定番のソースなのだそうですが、それをお肉ではなく揚げジャコと合わせるという発想も興味深いですね。
お料理がどんな風に作られているのか興味津々でキッチンを覗いてみました。この日、セバスチャンをサポートするために集まってくれたという友人シェフたちと、阿吽の呼吸で次々にタパスを仕上げていくセバスチャン。調理中の様子がショー感覚で見られるのもここならでは。
2品目が、木のプレートに載せられました。お料理は長いカウンターの一番端から順に運ばれていきます。そんな中に、ここでは誰もが知っている"ある人物"の顔が見えたのでお話を伺ってみることに。
「お酒を食べ物と口の中で混ぜる、一緒に噛むという日本人特有の食べ方があるのですが、今日は、食べ物の味の余韻とお酒を合わせた時に、違う味が出てくる。そういう設計だったんだというふうに驚かされるのが面白いですね」と語るのは、剣菱酒造の社長の白樫さん。
「例えばこの神戸牛のタルタルは、食べてお酒(福寿の純米吟醸)を飲んだ後にもう一度スモーキーさと、カラシナの辛みがやってくる。そう来たか!という感じでホント酔う暇がないですよ」と、満面の笑顔です。
そのお隣には白鶴の社長さんの姿も見えました。ここ灘五郷酒所は剣菱酒造の元酒蔵なのですが、酒蔵同士で横の繋がりもしっかりとあって皆仲も良く、灘五郷全体で日本酒を盛り上げていこうとしているのが見ていて感じられます。
こちらは白鶴酒造の「陽だまりのシュノーケル」とのペアリング。このお酒は白鶴酒造の若手社員が開発した「別鶴」シリーズとして、400種以上の酵母ライブラリの中に長年眠っていた酵母を目覚めさせて誕生した、時代に合った新感覚の純米酒です。
柑橘類の果皮のような香りとほろ苦さが、イクラとワサビクリームのコンビネーションを上手に引き立てています。洋食との組み合わせがぴったりな白ワインのような日本酒と、タパスの相性が抜群です。
セバスチャン、YOUはなぜ日本酒を?
料理と料理の合間には、キッチンを抜け出ては客席でお客さんとコニュニケーションをとっているセバスチャンの姿がありました。それは彼がここでの時間そのものを大切にしようとしている姿勢の現れだったように思います。
「今回、なぜ日本酒とお料理を?」と質問してみると「この10年間、日本酒と合わせるペアリングしかしていません。日本には発酵の食文化があり、何層ものレイヤーによって文化が作られている。ワインより日本酒の方が料理に対してのペアリングの可能性が高いと感じています」と話してくれました。