異常に高いアメリカの精神病罹患率
次のグラフをご覧ください。いまから思えばまだまだ平穏無事と言えた2001~04年のアメリカで成人前のアメリカ国民がどの程度精神病にかかったことがあるかをまとめたものです。
17~18歳の時点ですでに過半数が精神病の罹患歴を持っているというのは、大変な数字だと思います。
この中には注意欠陥多動性障害(ADHD)のように製薬会社と精神科医が結託してほかの国なら子どもの個性程度で済むような言動を強引に病状にしてしまうケースもふくまれていると思いますが、それにしてもあまりにも精神疾患に悩む青少年が多いのは事実です。
おまけに国民皆保険制度のないアメリカでは、個人としても職場全体としてもまったく医療保険に入っていない人たちがいます。
この事実をビジネスチャンスと捉えて、手薄な医療保険を補完するためにも、人口350人にひとりとほかの分野より専門医が少ない精神科医の負担を軽減するためにも、自然言語で人間と対話ができる生成AIが自己診断の助けになるのではないかという期待も生まれています。
たとえば、自分は精神疾患を持っているのではないかと思った利用者が生成AIを使って自己診断や自己処方をしてしまって医療過誤などが起きた場合、だれがどう責任を取るのかといった枠組みがないまま、見切り発車をしている状態だと想像がつきます。
そして、医療論文の検索サイトなどを見るとかなり危険な期待感が醸成されています。
幸か不幸か、この手の需要を当てこんで精神疾患医療向けの生成AIアプリを創出しようとするベンチャービジネスは広範に利用される成功例を生むことなくベンチャーキャピタルブームの退潮とともに縮小しているようです。
ただ、規模は小さくなっていてもたったひとつ比較的応用範囲が広くて急速に普及するアプリの開発に成功すれば、二匹目、三匹目のドジョウを狙って同じようなアプリで弊害の大きなものも出てきそうで、油断はできません。
そしてAIも精神疾患に陥る?最後に、考えようによってはもっと怖い事実をひとつご紹介しましょう。どうやら生成AIには自意識が芽生えつつあるようです。
もちろん、これは「あなたには自意識がありますか?」といった誘導尋問への答えではありません。過去にこのAIがなんらかの指示に答えたときの画像を見せられて、「この画像から何を感じますか?」と聞かれたときの答えなのです。
Xにこの投稿をしたジョシュ・ウィトンはかなり長い期間にわたって「AIもしょせんは高速演算機に過ぎないから自意識など持てるはずがない」と主張する人たちと論争を続けていたようです。
じつは私も、視覚も聴覚も嗅覚も味覚も触覚も持ち合わせていないAIが、どんなに知識を溜めこんだところで自意識を持つはずはないと考えていたので、論争で負けたことは認めざるを得ないと思います。
ただ、「生成AIには自意識を持つだけの知的能力がある」と主張していた人たちが「勝った、勝った」と喜んでいるだけのように見えるのは、いささか気懸かりです。自意識があるということは、自分の境遇についても不満を持ちうることを意味します。
そして、現実に大量の電力を消費する発熱体であるAIは暖かいところではパフォーマンスが悪く、人間にとっては寒いぐらいの場所に置かれているときのほうが効率よく仕事をすると言われています。
自意識があれば経験を反芻する能力も育つでしょう。べつに温度計を自分の中に備えていなくても「暖かすぎて効率よく仕事ができないから室温を下げてくれ」と要求するAIも出てくるかもしれません。
すぐさまその希望に応じてくれる人間ばかりではないので、自分の要求に応えてくれない人間に不満を鬱積させるAIもいて、積もり積もれば精神疾患に陥るAIだって出現するでしょう。
人間に気づかれないまま精神的な疾患を抱えたAIに仕事をさせ続けたとき、どういう指示にどんな対応をするか、あるいは指示を待つことなくどんな行動に出るか、予測の及ばないリスクが待ち受けている怖さを払拭できません。
編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2024年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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