犯罪や悪事に対する裁きは、社会システム全体によって下される

 このように三氏のケースを並べると、権力をほしいままにして大いなる怨恨を生み出した人物は、たとえ法で裁かれることはなくても、最終的に逃げ切ることはできないという、日本における法と社会の関係、あるいは日本人の犯罪観が見えてくるでしょう。

 そして、そこで重要な役割を果たしているのは、やはり世論の力です。世論は、ジャニー氏・田中氏のケースでは、被害者や警察・検察を突き動かす原動力となり、安倍氏のケースでは、被害者である安倍氏以上に、加害者である殺人犯に同情的な風潮を生み出しさえしました。犯罪や悪事に対する裁きというものが、法だけで決せられるのではなく、法を含めた社会システム全体によって下されているのだということを、三氏の事例が改めて教えてくれるのです。

 さて、「月刊サイゾー」(小社刊)2012年10月号から連載を始め、その後ウェブメディア「wezzy」「ビジネスジャーナル」(ともに小社運営)に活動の場を移したこの「法“痴”国家ニッポン」は、今回をもっていったん終了となります。足かけ10年以上にわたり、治安・犯罪に関して巷間に流布している言説の誤りや、警察・検察の知られざる実情などについて論じてきましたが、読者諸兄にとってなにかしら得るものがあったなら幸いです。長い間おつき合いいただき、ありがとうございました。 (構成=青木 隼)

提供元・Business Journal

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