近代国家の基礎は官僚制と常備軍である。今もそれは変わらない。政府の仕事が増えている今日、優秀な官僚機構がなければ国家は動かない。しかし、官僚は試験で採用されており、選挙で選ばれた政治家と対立することがある。

■スポイルズ・システム(猟官制度)

日本国憲法前文には、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」すると記されている。官僚は国民に奉仕する公僕であり、国民の代表である政治家が官僚を指揮する。自由な民主主義国家においては、選挙の結果成立した政権に官僚は従うべきであり、政権交代が頻繁にあると、そのことが認識される。

アメリカでは、建国以来、政権交代があると、主要官庁の幹部のみならず、下級役人や町の郵便局長まで交代させられた。これを猟官制度(spoils system)と呼ぶ。こうなると、官僚が政治に翻弄されることにもなり、近代官僚制が損なわれる危険性がある。

その行き過ぎに対抗するためには、官僚の「中立性」や「自律性」が必要であり、その点では、日本やフランスは、先進民主主義諸国の中で高く評価される官僚制を維持してきた。