〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は今回、前月比10万人減と2カ月連続で減少し110.8万人。引き続き、コロナ前平均の2015‐19年の平均値を上回ったが、冬が終わりを告げるタイミングでインフルエンザやコロナが再拡大が落ち着きつつあるようだ。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値を上回る水準が続くが2カ月連続で減少

nfp24mar_sickness (出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

足元、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、今回はNFPが30.3万人増に対し、家計調査の就業者数は49.8万人増と4カ月ぶりにNFPと足並みをそろえ増加した。

チャート:NFPと家計調査の就業者数の結果、4カ月ぶりにそろって増加

nfp24mar_nfpvshs (出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比0.6万人減と小幅ながら4カ月連続で減少した。一方で、パートタイムは同69.1万人増と5カ月連続で増加。複数の職を持つ者も同21.7万人増と3カ月ぶりに増加するなど、企業は正社員以外での雇用に積極的な様子を確認した。

チャート:フルタイムは4カ月連続で減少、パートタイムは5カ月連続で増加

nfp24mar_fpm (出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者は3カ月ぶりに増加した結果、1994年のデータ公表以来で2番目の高水準に

nfp24mar_multiples (出所:Street Insights)

米労働市場の堅調ぶりの証左として低水準で推移する米新規失業保険申請件数が挙げられるが、過去と比べ増加しない一因として、①給付額が米国内のインフレを加味していない、②パートタイムで働いた方が時給がよい(ex:カリフォルニア州でファストフード店の時給が20ドルへ引き上げ)--が挙げられる。実際、2022年以降の米新規失業保険申請件数・4週平均の月末値とパートタイムの就業者を比較すると、両者は概ね反比例の関係にあり、失業者は失業保険よりパートタイム勤務を選択しているようだ。

チャート:米新規失業保険申請件数・4週平均とパートタイム就業者数は、概ね反比例の関係

nfp24mar_Ini_partt (出所:Street Insights)

NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下をたどる。直近のデータをみると、CESは2023年9月に41.8%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は32.4%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、2023年10月に71.3%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

nfp23dec_survey (出所:Street Insights)

〇起業・閉鎖モデル

以前からお伝えしたように、これまで筆者は、複数の職を持つ者がNFPを押し上げた可能性を指摘していた。理由は、NFPの場合、賃金をベースにカウントするためで、家計調査と異なるため(i.e. 副業を持つ就業者の場合、NFPなら2つの雇用増とされるが、家計調査は仕事が2つあっても、1人分として集計する)。最近では、NFPを算出する上での起業・廃業モデルにも注目。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、2023年7月に同様の記事を配信し、起業・廃業モデルなどを理由に「NFPは労働市場を過大評価している可能性」を取り上げ、筆者以外に疑問視する声の存在を感じさせていた。

今回を振り返ると、起業の増加推計がNFPの雇用増を支えなかったようだ。起業・閉鎖調整ベース(季節調整前)の雇用増加をみると前月比2.1万人減と、前月の15.1万人増から、むしろ減少に転じた。

チャート:起業・閉鎖調整ベースの雇用増(季調前)は、小幅減

nfp24mar_bd (出所:Street Insights)

編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2024年4月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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