浦和の左サイドが機能
栗島と柴田の2ボランチや、現WEリーグ得点ランキング首位の清家(サイドハーフ)と同リーグ屈指の快足MF遠藤(サイドバック)による右サイドコンビに注目が集まりがちだが、今回の新潟戦では左サイドのユニットも機能していた。
この試合でも左サイドバックを務めた水谷は、適宜タッチライン際から内側へ移動しビルドアップに関与。自身と対峙する新潟の右サイドハーフ川澄の出方を窺うとともに、同選手に守備の的を絞らせないという狙いが感じられた。
「(浦和の左サイドハーフ)伊藤選手と話し合って、どちらかが内側でもうひとりが外側(タッチライン際)に立つことにしていました。(水谷と伊藤が)同じ列に立たないようにしていましたね」
試合後に筆者の取材に応じた水谷は、ビルドアップにおける自身のポジショニングの意図をこのように説明している。内側と外側両方にパスコースを確保する。この原則が浦和の左サイドで徹底されていた。
巧みに突いた川澄の背後
左サイドからの攻撃で浦和が徹底したもうひとつの原則は、川澄の周囲や背後に複数パスコースを確保することだった。
浦和DF長嶋玲奈(センターバック)が自陣でボールを保持した前半26分の攻撃シーンが、この典型例。ここでは伊藤がタッチライン際、水谷が内側に立ってパスコースを複数確保。これに加え伊藤が川澄の斜め後ろから突如現れ長嶋のパスを受けたことで、新潟の守備を掻い潜ることに成功している。その後伊藤のショートパスを受けた水谷が味方FW島田芽依へロングボールを送り、これが浦和の分厚いサイド攻撃に繋がっている。水谷と伊藤。この強力な左サイドユニットが威力を発揮した。
この日も左サイドハーフとして先発し、前所属先のINAC神戸レオネッサで川澄と共にプレーした伊藤も、試合終了後に筆者の取材に対応。水谷との連係に好感触を示している。
ー水谷選手との連係が良かったですね。水谷選手が内側に立ったら、伊藤選手は外側という感じで、立ち位置が重ならないようになっていました。「レーンが被らないようにしていた(同じ列に立たないようにしていた)と水谷選手も仰っていましたが、これに関して意識していましたか。
「(水谷)有希が中に入ってプレーできる選手なので、彼女の良さも出したいのと、ポジションチェンジをすることで相手がどうマークすべきか分からなくなる。レーンが被らないようにする、中に入ったり外側に立ったりをこまめにやることで良いパス回しができて、それが点に繋がったと思います」
ーパスが出てくる瞬間に、相手の視野の外から突如現れてボールを受ける。伊藤選手はこのプレーが本当に上手ですよね。
「相手がボールを取りに行く(プレスをかけようとする)タイミングを見るようにしていて、そのタイミングで入られたら(パスを受けに来られたら)嫌だなというのを意識しています。相手サイドバックが出てこれないタイミングも意識してプレーしていますね。そこからターンをしてボールを前に運べれば、もっと攻撃に絡めると思うので、狭いスペースでもボールを運べるようにしていきたいです」