最大のポイントは「労働者性」の有無
配達員は全国に約3万人おり、契約上は個人事業主(クロネコメイト)になっている。しかし、東京・国立営業所で業務を請け負う配達員は「実態は労働者」だとして労働組合を結成し、全国一般三多摩労働組合とともにヤマトに団体交渉を求めている。ヤマトは「事実上の労働者という実態はない」と反論し、団体交渉に応じていない。会社から「使用」されて「賃金」を支払われている「使用従属性」がどの程度あるのかを「労働者性」というが、配達員に労働者性があれば、会社は団体交渉に応じなければならない。全国一般三多摩労働組合の朝倉玲子書記長は、問題のポイントである労働者性について、次のように指摘する。
「厚生労働省は『労使関係法研究会報告書』で労働組合法上の労働者性の判断基準を提示しており、契約が画一的に結ばれていれば労働者性があるとしています。契約書がAさんもBさんもCさんもみな同じで、契約内容について個別交渉の余地がないものということです。ヤマトさんも20年前から一律に定型的な契約書で、名前だけ書けば済むフォーマットになっています」
労働者性があると判断できる理由は他にもある。
「ヤマトの契約書にはユニフォームの着用義務規定があり、最高裁でユニフォームの着用義務には労働者性があると認定されています。それから、労働時間と勤務場所が指定されているというのも労働者性の裏付けになる。1つ配達すると委託料21円で、これは全員一律です。配達する日にちと時間、区域も全部決まっているので、この部分でも労働者性がはっきりしています。しかも、配達した荷物の数はヤマトのほうで集計しており、配達員はヤマトから連絡された数を請求書に写し書きするだけになっています」(朝倉さん)
一方、ヤマトに今回の労働者性について取材したところ、次のように答えた。
「詳細については、個別の交渉に係る事案のため、この場での回答は差し控えさせていただきますが、全国一般三多摩労働組合に対しては、同組合の判例などにおいて労働組合法上の労働者性の有無を判断する際に用いられている枠組みを参考とする主張には理由がないことを丁寧にご説明しております」(ヤマト運輸コーポレートコミュニケーション部)