交通系ICの情報は少ないが利用へのハードルの低さがメリット

 そもそもSuicaやPASMOなどの交通系ICで利用者が確認できる交通利用以外の決済履歴の情報は利用金額と日付のみしかなく、『物販』と表示されるという簡素な仕様になっていることが、今回の問題が大きくなってしまった一因ではないだろうか。

 さらに発行元に問い合わせても、サポートセンターなどでもすぐに詳細の情報を確認することができず、専門部署に依頼する必要があり、返答に日数がかかってしまうとのことだった。他の電子決済サービスのように、利用した店舗、購入した商品、正確な日時などの詳細情報がわからないのは問題のように思える。

「クレジットカードであれば店舗名などが記録され、明細で確認することができます。把握できる情報で見れば交通系ICは簡素な仕組みといえます。いまの時代には不十分に感じる部分はあるでしょう。個人的にも他の電子決済のように、決済情報の詳細がすぐに把握できる仕様に改善してほしいです。ただ、利用した店舗名や商品明細を確認することはできないという事柄は利用約款にも記載されているため、消費者は納得して交通系ICを使用しているということになるのです。

 また、確認できる情報が少ない代わりに交通系ICは本人確認も不要で利用できる仕組みになっていたり、チャージ上限が2万円までというように少額での利用が前提になっていたりと、利用へのハードルが低く、その利便性の高さがメリットとしてあります。ですから情報量を最小限にしているおかげで簡易性を高められていると考えられますので、うまく全体のバランスを取っているのではないでしょうか。

 ちなみに、交通系ICでもスマホの『Appleウォレット』や『Googleウォレット』に登録していれば、利用した位置情報がきちんと残ります。その場合は利用場所と利用時間を把握することができるので、自分自身で過去の用途を辿ることはできるでしょう」(同)