英セキュリティシステム販売業者Calder Security社によると、世界で最も防犯カメラ(以下、CCTV)整備が進んでいるというイギリス国内に設置されているCCTVの数は、なんと約400万台にも及ぶという。国民は1日に平均して約300回CCTVに写されていると言われており、一部では個人のプライバシー侵害だという声も上がっている。しかし、CCTVに記録された映像が軽犯罪から凶悪事件にいたるまで、数多くの犯罪の解決に重要な役割を果たしていることから、なくてはならないものだと容認されているのが実態だ。
そんなイギリスのCCTVに、女性の頭部にクロスボウで矢を撃ち殺害する様子の一部始終が撮影された。犯人の男はCCTVに撮影されていることを知った上で被害者を殺しており、犯行直後、カメラを睨みつけ中指を立てていた。

この男は事件直後の2010年5月24日に逮捕され、あっさりと犯行を認めた。捜査の結果、バラバラにされた被害者の遺体が近くのエア川から発見。頭部は矢が刺さったままで、皮膚は剥がされていた。さらに、他にも2人の女性を殺したことを認めた。
殺人罪で起訴されたこの男は、裁判初日、裁判長から名前を聞かれると「クロスボウ・カニバル」と答えて全英に強い衝撃を与えた。殺害して遺体をバラバラにしただけでなく、遺体を食べたことを激白したからだ。
イギリスだけでなくヨーロッパ中を震撼させたこの男の名は、スティーブン・グリフィス。連続殺人鬼に強い憧れを抱き、大学の博士課程で殺人に関する犯罪学を学び、”描いていた最高の連続殺人鬼”になったサイコパスである。一体、この男はどんな人生を歩んできたのだろうか。
■ネグレクトされた子供時代
スティーブンは1969年12月24日、イギリスのウェストヨークシャーに位置するデューズバリーという町に誕生。冷凍食品のセールスマンだった父親と電話交換手の母親のもと、3人兄弟の長男として生まれた。大人しく口数少ない子供だった彼は、学業成績は優秀だったが、将来の夢や目標はなく、日々を淡々と過ごした。

13歳の時に、両親は離婚。スティーブンら子供たちは母親に引き取られたが、シングルになった母親は青春時代を取り戻すかのように遊びまわり、詐欺を働き警察沙汰を起こすようにもなった。生活は荒れ、自宅の庭で複数の男たちとセックスをする母親を、スティーブンは好んで見るようになった。エアガンで鳥を撃つのを趣味にし始めたのものこの頃で、撃った鳥は必ず真っ二つに引き裂いて、周囲を気味悪がらせた。
放任された思春期を過ごしたスティーブンは万引きするようになり、17歳の時には万引きしたスーパーの店員に犯行を咎められ、カッとなって店員の顔をナイフでざっくりと切って逮捕された。19針も縫う大怪我を負わせたスティーブンは、3年間少年院に入れられることになった。少年院には母親も父親も面会に来ることはなく、やがてスティーブンは心を閉ざすようになった。
この頃、スティーブンは保護観察官と精神科医に「そのうち、人殺しをすると思う」「連続殺人鬼に憧れる」と打ち明けている。そしてこれ以降、人を殺すことに強い憧れを抱く様になっていった。