海外で爆笑を引き起こした「日本人っぽさ」とは?
――詩歩さんが考える作品の見どころを教えてください。
詩歩:うわっ、難しいな……。でも、気に入っているシーンはやっぱり、悪魔になったハルカが自分の手(チェーンソー)で畑を耕していて、そのときにコウスケと再会するシーンです。あそこはやっていても楽しかったですし、ちゃんと出会えた気がしました。
それから、音を作ってくださったのが、『スターウォーズ』の小川高松さんやジブリ作品の大川正義さんです。音だけはハリウッド級なので、劇場で音も楽しんでほしいと思います。
――トリノ映画祭(イタリア)やFantastic Fest(アメリカ)でも上映されましたが、海外の反応はどうでしたか?
詩歩:めちゃくちゃよかったです。トリノ映画祭もFantastic Festも満席だったんですよ。海外の方々は、目にドライバーを刺すシーンで “Wow!” “Ouch!” と言いますし、いろんなところで手を叩いて笑ってくれるんです。
特に「日本人っぽくておもしろかった」と言われたのは、ハルカがお茶を飲んで帰るシーンでした。ちゃんと「ごちそうさまでした」と言っていくのが日本人らしいそうで、そこで爆笑が起きるんですよね。
遠藤隆太が演じている謎のソウタもウケました。「日本の引きこもり問題を象徴している」と感じるみたいで、ソウタがしゃべると爆笑が起きます。「そこで笑うんだ……」と不思議でしたね。
起こったことに対してあまり反応しない野村さんも、日本人っぽさと受け取られたようで大絶賛です。取材でも「最高だぜ!」と言われていました。
海外の方々も悪魔の「ギャ」でずっと笑ってくれましたね。観終わると、私たちに「ギャ、ギャ」と話しかけてくれるんですよ。「よかったよ!」みたいなことを言っていたんだと思います。「『ギャ』は世界を変えるな。言葉は要らないな」と感じる凄い経験でした(笑)。

――遠藤さんや野村さんのお話も出てきたので、キャストさんの思い出を教えてください。
詩歩:一番「ずるいな」と思っているのはタカノリ役の板橋春樹ですね。タカノリは内臓を持って「ギャ、ギャ」と言っているじゃないですか? でも、ちゃんと「カレーライス、カレーライス」とか言っているんですよ。現場では監督も録音部も気づかなかったんですが、整音のときに「今『カレーライス』って言ったよな?」と発覚しました。そういう遊びをする男なので超ずるいです(笑)。
平井早紀は短編であれだけ振り切って、『死霊のはらわた』を凌駕したくらいの芝居をしてくれました。悪魔メイクしてからもずっと「ギャ、ギャ」と楽しそうでしたね。
私は「この二人を超えた個性を出さなきゃいけないのか……」と思って苦労しました。3人のやり合いでしたね。仲が良いからこその「遊び合い」といった方がいいのかもしれませんが。撮影期間も1週間ちょっとだったので、信頼し合っている仲じゃなかったら成り立たなかったなと思います。形になって本当によかったです。