滑車式の欠点を解消したばね式の自動張力調整装置
滑車式の欠点を解消した自動張力調整装置はすでに存在し、ばね式自動張力調整装置(以下、ばね式)という。この装置は円筒の中に収められたばねが架線を引っ張っる仕組みを備えており、滑車式に比べれば構造は単純で、メンテナンスも容易なことから、トラブルを予想しやすい。1960年代から実用化されているものの、ばねで押さえられる力がやや小さいため、滑車式と比べて半分以下の距離となる600メートルの架線を引っ張るのが限界という欠点があった。それに、滑車式と比べて安定して架線を引っ張る能力もやや劣る。
重りをぶら下げるという単純なつくりは、つまりは一定の力で引っ張り続けることと等しい。滑車式の場合、理論上は張力が変動する割合は5パーセント以下で、1.6キロメートルの架線を新幹線に張ったときの変動率は8パーセント以下だそうだ。これに対してばね式はばねが伸び縮みする量に応じて引っ張る力が変わるので、張力の変動率は最大で15パーセントに達することもあった。改良の結果、2000年代になってなんとか9パーセント以内に収められ、しかも滑車式と同じ距離の架線を引っ張れるようになる。東北新幹線では2002(平成14)年から2010(平成22)年にかけて新たに開業した盛岡-新青森間で採用されている。