値下げ商品の減少が利益率改善に

 前述の通り「しまむら」の売上は伸び続けたのだが、同時に利益も大幅に改善した。利益率改善についてはどのような要因があるのだろうか。

「利益率の改善という視点で見ると、正価で販売される比率を示す建値消化率のアップと、値下げによって販売される値下げ消化商品の減少が挙げられると思います。全国約1400店舗を有する『しまむら』では、地域内での売れ残り商品を販売力の高い店舗へ移動し、再販しています。こうした取り組みが利益率改善の一因として考えられます。

 また、全国の店舗では均一な施策をしていません。若い人をターゲットにしたトレンド商品は大型店とウェブ限定とし、地域性を考えてお年寄り向けの商品も投入しています。そして寒い地域・暑い地域と、南北に伸びた地域性も考えた商品投入も行っています。それらの効果の程度は定量化できませんが、均一に商品投入するよりは明らかに販売ロスが少なくて済むと思われます」(同)

 地域性を考えたうえで投入する商品を変動させる、そのうえで売れ残ったものは他の店舗で売る。こうした施策が利益改善につながったという。ちなみに、商品をすぐに切り替える「売り切れ御免」の施策が在庫回転日数の改善につながったとも指摘されている。23年12月15日付け日本経済新聞記事によれば、直近通期決算の在庫回転日数は31日であり、ファストリや良品計画より短いという。だが、品揃えの頻繁な変更は客離れにつながらないのだろうか。

「品揃えの頻繁な変更は、リピート客へは飽きさせない売場として鮮度アピールが出来る反面、目的買い商品の欠品というリスクも介在します。事実、シーズン後半になるに従ってサイズ欠品やカラー欠品している状態が目立ちます。その結果、売上高ほどPBブランド『CLOSSHI』の知名度が浸透していないような気がします。生活者から安定した信頼がいまいち獲得しきれていない理由のひとつなのかもしれません」(同)

 安く機能・デザイン面で一定の品質があるPB商品・JB商品が消費者に受け、コロナ禍での営業継続やSNSの有効活用もあって増収につながった。そのうえで地域性を考えた商品投入や他店舗での再販、品揃えの頻繁な変更により在庫を改善し、営業利益率を8.5%まで向上させたかたちだ。一方でPBブランド自体の知名度はあまり高くない印象がある。この点を改善できれば、さらなる業績アップにつながるかもしれない。

(文=山口伸/ライター、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)

提供元・Business Journal

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