昇格目前だった2017年~共闘の終わり

福岡はそれまで成績不振に陥るたびに繰り返してきた監督交代を選択せず、翌2017シーズンも井原監督を続投。この策はある程度成功し、リーグ4位でJ1昇格プレーオフに進出した。準決勝を突破し決勝へと進んだが、3位の名古屋グランパスに勝ち切れず(0-0)昇格とはならなかった。

神山「(名古屋に)目の前で昇格を決められて、試合後は悔しいという思いしかなかった。でも、リーグの順位で名古屋を上回っておけばよかっただけの話。それができなかったから悔しい思いになりました。ただ、あの光景は2度と見たくないですね」

鈴木「翌2018年に(福岡に)戻って再び井原さんのもとでやるんですけど。(2016年に)試合に出られず1年間外に出て帰ってきた自分を、また1からスタートの台に載せてくれました。シーズン途中からはキャプテンに指名されて、コミュニケーションを取ることも増えました。今は分からないですけど、井原さんは自分からたくさん喋りかけるタイプではなかったので『こう思うんですけどどうですか』と自分からガンガン喋りにいってました。2016年は試合に使われず『なんだよ』と思った時もあったんですけど、2018年の最後には『この監督のために全部出したい』という気持ちでプレーできた。そういう意味ではリトバルスキーと同じぐらい、自分の中では大切な監督ですね」

結果的に7位で惜しくもプレーオフ進出を逃したこの年をもって神山は福岡を退団。2人の福岡でのストーリーは終わりを迎えた。

リトバルスキー氏(左)篠田善之氏(右)写真:Getty Images

印象深い監督と今後の2人、そして戦友へ

福岡に在籍中、多くの指導者のもとでプレーした2人。特に印象に残っている監督を挙げてもらった。

鈴木「デビューさせてもらったので、リトバルスキー(2007~2008シーズン途中まで指揮)ですね。チームとして結果は出なかったんですけど、シュート練習やボールの受け方、ターンの仕方だとかをよく1対1で見てくれたりして。今考えると贅沢でしたね。個人的に気にかけてもらっていたと思います。リトバルスキーのもとでプレーした選手は多分みんな思っているんですけど、チームの中で監督が1番技術は高く、なかでもキックの精度は右も左も本当に高かった。選手時代に世界一(ドイツ代表として1990年イタリアW杯優勝)になった人だから追い付けるとは思ってなかったですけど、自分も左足のキックには自信を持ってプロになりました。

でも監督はシュートを10本打ったら、7本か8本は確実にゴール四隅のボール一個分のところに行く。それを若い時に見られたので慢心することはありませんでした。それに、すごく負けず嫌い。それを見て(勝負に)こだわるところも学びましたし、気にかけてくれてデビューさせてくれて、クオリティの高さもたくさん見せてもらったので、誰かと聞かれたらパッと思い浮かびますね」

神山「自分は、大怪我したあとも試合に使ってくれた篠田監督(現・ヴァンフォーレ甲府監督)ですかね。篠田さんとは2010年にJ1昇格しましたし、その印象はデカいです」

鈴木は現在、リトアニアでプレーを続けており、現役への思いは強い。

鈴木「海外で現役をできるだけ長く続けたい。今年1年リトアニアでプレーをして、違う文化に触れて、凄く世界が広がりました。自分自身がもっともっと努力しなきゃいけないと感じられたので、それを活かしていろいろな国で視野を広げていきたいですね」

神山は福岡退団後ラインメール青森に移籍し、2020シーズンをもって引退。現在は福岡県の強豪、東福岡高校でGKコーチを務めている。

神山「自分がやってきたこと、良いと思ったこと、指導するなかで経験してきたことを高校生に伝えていけたらと思っています。GKって試合中はそんなにきつくないんですけど、1本のキャッチ、1本のセーブのために練習でハードワークしないといけないポジション。そのためにも練習量や練習の質に関しては、生徒たちに甘さなく、強く、厳しいかもしれないですけど伝えていきます。

選手を辞めて指導者をやりたいという気持ちはありましたけど、サッカーしかやってこなかったから社会勉強をしたくて、サッカーから一時離れていました。いろいろやった後で指導者に戻れたのは良かったですし、日々勉強です。選手をやるのとは全く違うので、そこは毎日面白さと難しさを感じています」

最後に現在の福岡へエールをお願いすると、チームとともに戦友へ神山らしい言葉をくれた。

神山「次で4年目とJ1に定着はしつつあるので、それを持続しつつ上位争いや優勝争いしていってもらえたら。あとはやっぱり、城後がいつ辞めるのか(笑)そこは引き続き注目しています。今年で20年目、凄くないですか。あとちょっとで500試合出場(現在J1およびJ2のリーグ戦通算487試合)なので、そこは現役中に達成してほしいですね」