目次
5. 「南極の博物館」で知る南極観測の理由
6. 「ヨーソロー!」航行ブリッジでハンドルを握る!

5. 「南極の博物館」で知る南極観測の理由

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

さて、船内の様子をじっくり見学した後は、2階へ上がって「南極の博物館」で学びの時間です。

当時、甲板だったスペースが博物館として使われ、南極大陸の成り立ち、南極観測の様子と実績などが分かるパネル、歴代の砕氷船模型、実物の雪上車などが展示されています。

展示物を見ながら、山口さんにもいくつか質問してみました。

―そもそも、なぜ南極を観測することになったのですか?

山口さん「南極には人が住んでおらず、人間にとって未知の世界でした。そのため、第二次世界大戦が終わった頃から、この地域を調べたいと、世界中で南極へ向かう動きが活発になったのです」

―日本もそこに加わった?

山口さん「はい。日本が参加できたのは、昭和31年のことです。敗戦国として扱われたこともあり、一時は参加を拒否されもしましたが、最終的になんとか参加を認められました。終戦後の日本が国際社会に認められるきっかけともなる、とても意義のある一大国家事業だったのです」

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

―日本の南極観測では、どんなことが分かったのでしょうか。

山口さん「昭和基地の上空で、オゾン全量が急に少なくなっていることに日本が初めて気づいたそうです。はじめは観測機器の故障を疑われましたが、後のオゾンホール発見につながったというのは代表的な成果ですね。そのほか、世界に先駆けて日本が成し遂げた実績としては、南極隕石の発見やロケットでオーロラ発生の仕組みを観測できたことなどがあります」

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

―南極観測では、具体的にどんなことを調べるのでしょうか。

山口さん「ひとつには氷ですね。南極大陸の氷は、降った雪が固まってできたもの。そのため南極大陸には、標高が3,800mという富士山より高い所もあり、その場所の氷の厚さは3,000m以上あります。この分厚い氷をいかに深いところまで手に入れるか。その頃の大気の状態、つまり百万年前の地球の様子が分かってくるんです。さらに、地球温暖化の予測や解明にも発展していくわけです」

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

―気の遠くなるような、それでいてロマンを感じるプロジェクトですね。ちなみに、山口さんが忘れられない南極観測でのエピソードはありますか。

山口さん「ナンキョクオオトウゾクカモメ(写真中央)に襲われました(苦笑) 国際条約の南極条約では、アザラシは15m、ペンギンや鳥は5m以内に近づいてはいけないルールがありますが、撮影しようとカモメの巣に近づきすぎてしまったがために、飛んできて足で威嚇されたんです。それでもカメラを構えてシャッターを押したので、思いがけず迫力のある写真が撮れました。しかし、カモメには申し訳ないことをしたと思っています」

極感ドラマチックシアター

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

前面、左右と床の四方を囲む巨大なスクリーンで、ふじに乗っているかのような気分を味わえる疑似体験を楽しめます。映像は「南極観測船ふじ 氷海を行く」(2分30秒)と「南極大陸を行く」(2分40秒)の2本がリピート上映されています。

雪上車

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

初めて南極を目指した「宗谷」の時代に活躍した、国産第1号の雪上車です。役目を終えて南極に置き去りになっていましたが、「ふじ」の時代に地球環境保全のために回収し、こちらで展示されています。

極寒の地で使う雪上車のエンジン燃料には何が適しているのかも分からない時代。この雪上車はガソリンで動くタイプとして投入されたものの、結果的にディーセルエンジンが採用され、最初で最後の1台として今に残されています。

6. 「ヨーソロー!」航行ブリッジでハンドルを握る!

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

「南極の博物館」から甲板に出て、海上自衛隊のヘリコプターを眺めたら、外の階段を上って3階へ。船を操船し、船内の各所に指令を出す司令塔としての役割を果たす「ブリッジ」の中を見て行きましょう。

操縦ハンドルと伝声菅

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

「ふじ」が一般的な船と異なるのは、「チャージング航行」といって、前進と後進を何度も繰り返して船首で氷を砕きながら進んでいく点です。操縦ハンドルは、船のエンジンへ速力を伝える大事な役割を担っています。操縦ハンドルの上には、進行方向と速度が細かく分けられた「速力区分 発停増減速区分」が掲示されています。

ハンドルの上に取り付けられたラッパ状の装置は「伝声菅」という管で、電話もなかった時代に船内でほかの部屋と話をするために使われていました。話をするために備えられていた管です。その名残が「ふじ」にもありますが、電話の予備という位置付けで、あまり使用されなかったようです。 

艦外の号令

南極へのロマンかきたてる「南極観測船ふじ」(名古屋)に乗船してみた
(画像=『たびこふれ』より引用)

ふじへ乗船する際のことですが、号令とそれに答える声が聞こえていました。どうもその号令は、このブリッジから発せられるものだったようです。上官が伝声菅を通して指令を出し、乗組員がそれを受けて復唱して船を操作するそうです。

気を付けて聞いていると、「間もなく乱氷帯に入る」「ヨーソロー」「両舷前進第一強速」「両舷停止」「両舷後進半速」「チャージング航行を行う」といったやりとりが分かります。ちなみに「ヨーソロー」とは航海用語で、「宜く候(よくそうろう)」が変化したもの。そのまま進めという意味だそうです。