除籍数が突然急増、そのカラクリ
では、翌年度以降はどうなったのか。19年度とは対照的に21年度の除籍数は約7500冊、さらに22年度は1万冊以上に急増しているが、これにはカラクリが隠されていた。

除籍の決裁文書を時系列にみていくと、21年度は4回除籍が行われている。「破損・紛失等による弁償除籍」が1回、「亡失資料の除籍」が2回だが、いずれも5月最終週(24日と31日)に行われており、残り1回の「リサイクル除籍」は11月だった。除籍された冊数をみてみると、11月の「リサイクル除籍」では約7000冊も除籍されている。そのほかの回はいずれも90冊程度だった。つまり、21年度の除籍の97%が11月のリサイクル除籍に集中している。
ちなみに和歌山市民図書館では除籍は以下の4種類に分かれている。
・破損・紛失等による弁償除籍:利用者が汚したりなくしてしまったことによる除籍。
・亡失資料の除籍:蔵書点検の結果、4回連続で所在不明となったため除籍。
・破損その他の除籍:利用者の弁償対象ではない汚破損や内容が古くなったため除籍。
・リサイクル除籍:市民に譲り渡すための除籍。

除籍に関する起案書に添付されていた鏡文には、「除籍理由」として「令和3年11月23日(火)に開催される『図書リサイクル』用譲渡資料とするため」と書かれている。勤労感謝の日に市民に蔵書を譲渡するリサイクルイベントを開催するために一挙に7000冊もの除籍を申請したということのようだ。注目したいのは決裁文書の日付である。起案日は11月22日だが、決裁日も同日になっている。つまりイベント前日にCCCは7000冊もの除籍リストを市教委に提出して、市教委が即日決裁しているわけだ。

ある図書館関係者はこう指摘する。
「一度に7000冊も除籍するというのは、あり得ないことではないですが、問題はどうやって除籍対象を決定したのかにあります。また、除籍した資料とは別の年度版や改訂版など、今後必要になる資料の買い替えや更新がきちんとなされたのかをみないといけません。除籍は『残す本を選ぶ』行為なので『マイナスの選書』といわれています。一度除籍したら、その本は二度と戻ってきません。ですから安易に除籍してしまうと、重要な資料まで廃棄してしまうという事態を招きかねません。そのため、複数の職員による厳しいチェックを経なければなりせん。何より本に精通した目利きが必要です」
和歌山市民図書館では7000冊の除籍リストが提出された当日に市教委の担当課が決裁しており、そうしたチェック体制があったのか、どの本を図書館に残すべきかという視点があったのかは疑わしい。ちなみに、翌22年度も同じく11月23日にリサイクル譲渡会が開催され、そのために約8000冊の除籍の伺い書が11月1日に起案されているが、決裁は翌日11月2日だった。