2020年代後半と見込まれているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の開業を前に、高齢者のギャンブル依存が問題になっている。ギャンブル依存は多重債務や貧困、自殺、犯罪などと密接に関連すると考えられており、解決が急がれる一方で、当事者は依存症からなかなか抜け出せないようだ。ギャンブル依存にどう向き合えばよいのだろうか。

ギャンブル大国日本、パチンコは14.6兆円の巨大市場

ギャンブル等依存症対策基本法はギャンブル依存症について、「ギャンブル等にのめり込むことにより日常生活または社会生活に支障が生じている状態」と定義している。日本国内におけるギャンブル依存症の実態に関しては、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターが実施した2020年度「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」が参考になる。

同調査によると、ギャンブル依存が疑われる人は2.2%程度。ギャンブル依存が疑われる人に、過去1年間で行ったギャンブルの種類を尋ねたところ、最も多かった回答はパチンコの70.3%で、次いで多かったのがパチスロ52.7%、宝くじ(ロト・ナンバーズ等も含む)41.2%、競馬20.6%だった。

また、過去1年間に週1回以上行っていたギャンブルとして最も多かった回答もパチンコ(25.5%)で、最もお金をつぎ込んだギャンブルもパチンコ(38.7%)が最多だった。

日本でパチンコは風営法上の「遊技」と位置付けられており、刑法の賭博罪の対象にはあたらない。一方、オーストラリアの非営利団体「ゲーミング・テクノロジーズ・アソシエーション」は、世界で合法的に設置されている約740万台のギャンブル用ゲーミング・マシンのうち、およそ6割が日本で稼働していると報告している。

日本生産性本部の「レジャー白書2022」によると、日本国内のパチンコの市場規模は14兆6,000万円と巨大で、日本は「ギャンブル大国」との指摘もあるほどだ。

一人暮らし高齢者が増加、孤独感を紛らわすため…

もはや身近なギャンブルともいえるパチンコに、なぜ高齢者はのめり込んでしまうのだろうか。

高齢者がギャンブルにのめり込みやすい背景には、単独世帯の増加と孤独化がある。定年後に仕事をしなくなり、孤独になった高齢者がそれを紛らわすために、ギャンブルに手を出しているのかもしれない。

内閣府の2018年版高齢社会白書(全体版)によると、1980年の一人暮らし高齢者(65歳以上)は男性が約19万人、女性が約69万人で、65歳以上の人口に占める割合はそれぞれ4.3%、11.2%だった。

これが2015年になると、男性は約192万人、女性は約400万人、65歳以上人口に占める割合はそれぞれ13.3%、21.1%まで増加した。この割合は今後さらに増えることが見込まれている。

ギャンブル依存症対策としてできることは?

高齢者のギャンブル依存対策として、何をすべきだろうか。

高齢者をギャンブルに向かわせる背景が孤独化である以上、ギャンブルにのめり込みつつある高齢者を孤立させない支援が必要だ。

また、ギャンブル依存はギャンブルにのめり込んでいる当人は自覚しにくく、貯金を使い果たしたり借金を抱え込んだりする前に、周囲の家族などが状況に気付くことも重要だ。

上記の「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」でも、ギャンブル障害は「適切な治療や支援によって回復可能」としており、専門の医療機関やギャンブル依存症の支援団体などに早めに相談するべきだ。

福祉向け専用パチンコ「トレパチ」とは?

認知症予防を目的に開発された福祉向け専用パチンコ「トレパチ」も、ギャンブル依存対策に活用できる。トレパチはパチンコ機メーカーの豊丸産業が開発したパチンコ風のレクリエーション機器で、お金は賭けないことから散財の心配は不要だ。

トレパチには通常のパチンコ玉ではなく、特殊加工の専用玉を使用し、防音対策が施されている。遊び方も簡単な設定やトレーニング重視の設定など複数あり、個人の好みに応じて選べる。認知機能の維持にもトレパチは効果的で、ギャンブル依存対策と併せて活用するとよいだろう。

周囲の孤立させない支援が重要、福祉向け機器の活用も有効

ギャンブル依存は多重債務や貧困、自殺、犯罪などと密接に関連する深刻な問題だ。当人はギャンブル依存に陥っていることに気付きにくく、周囲の家族などが本人を孤立させない支援が必要だ。

どうしてもパチンコをやめられないという人には、福祉向け専用パチンコ「トレパチ」といったお金を賭けない機器もある。そうした機器も活用しながら、ギャンブル依存に向き合ってほしい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

【関連記事】
サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!