孫や子どもの名義で銀行口座を開設し、祖父母や両親が貯蓄するケースがある。孫や子どもが大人になった時、サプライズとして貯蓄した通帳をプレゼントするためなど目的は色々あろう。
しかしこの場合、孫や子どもの名義を借りた“名義預金”に該当する可能性がある。名義預金に該当すると、贈与税や相続税の対象になり、申告を忘れると無申告加算税などのペナルティーを課されることもある。
そこで、孫や子ども名義で口座を管理する際の注意点を解説しよう。
毎年110万円の貯蓄でも一括贈与に
口座名義人が誰であろうと、口座への入金を祖父母や両親が行っていれば、原資は祖父母や両親のものと判断される可能性が高い。そうなると贈与に該当し贈与税がかかる。ただ、贈与税に関しては年間110万円までの基礎控除がある。
つまり、110万円を超えない贈与であれば贈与税はかからない。そこで贈与税の基礎控除を考慮して、孫や子ども名義の口座に年間110万円ずつ5年間貯蓄したとする。贈与税の基礎控除内のため、贈与税はかからないと考えるのが一般的だろう。
しかし、将来この通帳を孫や子どもにプレゼントした場合、年間110万円以内の控除枠は考慮されない。通帳に貯蓄した全額(110万円×5年=550万円)を一括贈与したとみなされる可能性が高いため、注意が必要だ。
定期贈与にならないように……
本来であれば、まとまったお金を贈与として処理したいものの、節税のために贈与の基礎控除を利用して大きなお金を少しずつ移し替えようと考える人もいるはずだ。しかし、これは定期贈与とみなされる可能性が高い。
例えば、110万円を10年間かけて贈与したとしよう。この場合、先ほどと同じように1,100万円の贈与があったとみなされ、1,100万円に対して贈与税が課される可能性が高いのだ。
あらかじめ金額を決めて少しずつお金を移管したり、定期的な贈与を約束したりしてはいけない。また、毎年同じ時期に同じ金額を貯蓄すると、定期贈与とみなされる可能性が高いため注意しよう。
贈与契約書を作成する
贈与のつもりで贈与税の基礎控除内で貯蓄していても、贈与者が亡くなれば「贈与者の財産」とされ、相続税の対象になる場合がある。名義預金や相続財産の一部としないためには、贈与契約書を作成するとよいだろう。
贈与は、贈与者と受贈者の両者の同意で成立する。税務署などの第三者に認めてもらうためには、贈与契約書を作成しておくと安心だ。
口座を開く際は孫や子どもの印鑑を使う
口座開設において祖父母や両親が使っている印鑑を使うと、実質的には祖父母や両親の通帳とみなされる可能性が高い。口座開設のときから、孫や子どもの印鑑を使うようにしよう。
孫や子どもが自分の通帳を自由に使えるように
先ほど紹介したように、贈与では両者の同意が必要だ。しかし、孫や子どもが自分のために作ってくれた通帳の存在を知らなければ、贈与が成立しているとは言えない。
孫や子どもが大人になった時にサプライズでプレゼントしたい気持ちはわかるが、名義預金とされないためにも、孫や子どもに通帳の存在を明かし自由に使えるようにしておく必要があるのだ。
税務調査で指摘されないために注意が必要
「税務署は調べないのでは……」と考える人もいるかもしれない。ただ、相続が発生した場合に税務調査が行われ、過去10年の金銭取引履歴をチェックされる可能性がある。
その際に、まとまったお金の流れがあれば、すぐに指摘されるだろう。孫や子どもが追徴課税などのペナルティーを課されないように、しっかり対策をしておくべきである。
文・山村望愛(ファイナンシャル・プランナー)
大手証券会社で約8年間、窓口にて個人向けの資産運用アドバイスを行う。退職後はライターとして活動。現在は、投資初心者向けの記事などを執筆している。
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