前半の結論
ゴールディン氏の研究は、いわゆる「ジェンダー論の内輪の茶話」において「古い社会の差別意識が全ての元凶だ」みたいな話を延々とやっているレベルを一段飛び超えて、「結局今の経済構造や会社の制度のどういうミスマッチがあってどこを変えればいいのか」が具体的に見えてくる研究であった点が非常に優れていたように思います。
要するにそうやって「何段階かブレイクダウン」して、具体的な話にはいっていかないと問題は解決できないんですよね。
私が何度も言うことですが、「私立大学医学部入試の差別問題」を扱う時に、ちゃんと話を「医療制度改革」まで持っていかないで「ただ差別したいからしてるんだろう」みたいな茶話をしていても結局どこか別のところにシワ寄せするだけの弥縫策しか出てこない。
全部「意識の問題です」みたいな話を延々とやって、ほんの一部の男の「失言」を超絶大問題のように叩きまくっていれば社会が前に進むという幻想を乗り越えるべきが来ています。
逆に言うと、そうやって「その社会の本来的な特徴と噛み合った女性の無理のない働き方」が具体的な制度として動き出してこそ、そういう「失言」をする男を本当の意味で抑止することがはじめて可能になるんですよ。
そういう意味で、ゴールディン氏の著作に「反フェミニスト」的要素があるかないかというと、「”SNSの特級呪霊”のようなフェミニズム」とはかなり違う要素が含まれている…とは言えると思います。
そういう「恨み言の化身」みたいになってしまった人は、それだけの何らかの不遇な経験があったのでしょうし、それが生きがいである以上これからも続けていただくしかないとは思うんですが。
ただ、そういうのに延々付き合っていてもその「恨みの源泉」は解決できないわけですよね。
「特級呪霊」みたいになってしまった人たちの思いを本当に昇華するためにも、「具体的なミスマッチ」をいかに解消していけるか?という議論に、両側から注意を集中させて一歩ずつ変えていくことが必要ですよね。
その「具体的に日本社会を変えていくために大事なこと」は、ぜひ次回の「後編」を読んでいっていただければと思います。
特に、今の日本で働いている若い女性にとって「あと一歩前に出る」決断をすれば、キャリアが断然ラクに、そして可能性が開けたものになる方向性ってのがあるんだ、という話を「後編」ではしています。
(後編につづく)
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つづきはnoteにて(倉本圭造のひとりごとマガジン)。
編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2023年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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